「五感でアート」から「互換でアート」へ

中平です。私が中学校選択美術で行っている講座の名前は「五感でアート」。表現の中心である五感(触・味・聴・臭)などを刺激する表現をする楽しさや、五感を使って鑑賞を楽しむ。それこそが美術やアートの楽しさなんだということを中学生に感じてもらいたいということがこの講座の考え方になっています。今年の夜のやねうら美術館や暗闇美術館では、さらにその考え方を広げる新たな考えをひらめきました。それは「五感でアート」ではなく「互換でアート」。美術を美術専門の人たちだけのものにせず、学校だったら、理科の先生や数学、物理にまで広げたい。そうしたほうが表現が楽しくなるのではないか。例えば、音が聞こえるのは、空気の振動による。音は理科で考えたらどういう音の出し方があるんだろう。アートや美術の表現の場に美術以外の領域も動員したい。まさに「互換性」のある表現ができたらもっと面白くなるんじゃないか。五感は互換でさらに広がると思います。暗闇美術館から「暗闇博物館」へ。夜のやねうら美術館から「夜のやねうら博物館」へ。できたらいいなあと思います。
写真は、3年卒業制作「心の闇」という作品。真っ黒な箱のふたを開けると、中はさらに真っ暗。何があるのかわかりません。手を入れてみると、なにやらオブジェらしき物体を感じます。光を当てない限り姿が見えないので想像するしかありません。作者のキャプションには「人には必ず心の闇がある。闇があって当たり前だ」と書いてあります。