葛飾北斎も何度も通ったという長野県小布施町は、豪商が文化の担い手としてまちづくりを行って来た歴史をもつ街。ここにある禅寺・玄照寺では、半世紀の歴史をもつ春の苗市(苗や種などのほか、屋台がでる縁日)がどうも振るわなくなってきたため、檀家さんたちが知恵をしぼった結果、「アートをやろう」ということになったそうで、4年前から「境内アート」なる企画をはじめました。

私は昨年、一昨年と参加しましたが、一昨年は駅から玄照寺までの約1キロの道のりに、「くりんこくん」なる仙台と小布施の子どもたちに描いてもらったくりをモチーフにした絵を毛糸で結び、導線としたり、街の重要文化財に指定されている仁王門から毛糸を投げたりしました(詳しくはこちら)。
街の方もいろいろ手伝ってくださり(写真)、「いっしょにやるのが、門脇さんの意図なんだよね」とかこちらの意図もよく理解していただきました。
帰りにはあちこち車で案内してくれたりしたので、翌年は他の参加作家に「小布施通」と思われたほど。

昨年は東鳴子でもらったシーツを使った「雲」をつくりました。禅宗では修行僧を「雲水」と呼ぶところから発案したもので、坐禅もやってみようと、横浜にある曹洞宗の本山・総持寺にも行きました。
このときも仙台と小布施双方の子どもたちに、「もくもっくん」なる雲をモチーフとした絵を描いてもらい、境内の廻廊につるしました。

今年は残念ながら仙台での企画があるので参加できないのですが、「境内アート」に長野のアーティストとして中心的役割を果たしているなかむらじんさんが、新企画として、おぶせハイウェイミュージアムを使った「オブセコンテンポラリー」を発案、動き出したようです。
小布施の街には文化施設がたいへん多く、商店なども景観を大切にした街づくりとなっています。また、それら豪商の流れを汲むお店が個人コレクションを開放しているだけでなく、一般の民家でも「オープン・ガーデン」と称して、自分の庭を開放していたり、それらをとりまく郊外地域は果樹畑がつづき、温泉もあるという、本当に訪ねるのが楽しみな街のひとつです。

(コメント:門脇篤