難民認定、法務省が9カ月放置 勝訴のミャンマー男性に(中国新聞6月8日)

東京高裁が昨年八月に難民と認め、法務大臣の難民不認定処分を取り消した群馬県在住のミャンマー国籍の男性(44)に対し、法務省が判決確定から約九カ月がたっても、難民認定や在留資格(ビザ)を出していないことが八日、分かった。

 妻(34)は今年三月、長女を出産したが、在留資格がないため国民健康保険に加入できない。出産には五十万円を超える費用がかかったが、どこからも補助を得られなかった。

 男性は「子供が病気になった時のことを考えると不安でしょうがない。法務省は判決を尊重して早くビザを出してほしい」と訴えている。

 訴訟で代理人を務めた弁護士は「裁判で負けを認めて判決を確定させておきながら、難民不認定処分を是正しないのは理不尽」と批判。難民問題に携わる専門家らも「人道的配慮に欠ける」と厳しく指摘している。

 東京高裁の判決などによると、男性はミャンマーの少数民族、ロヒンギャ族で、二○○○年十二月、名古屋空港から入国。同国軍事政権に反対し民主化を求める「在日ビルマ・ロヒンギャ協会」(BRAJ)に入会し、ミャンマー大使館前のデモなどに参加した。

 ○一年に申請した難民認定は○三年に不認定となり、処分取り消しを求めて○四年に提訴。

 東京高裁は昨年八月、男性の請求を認めた東京地裁判決を支持。軍事政権から民族、政治的意見などを理由に迫害を受ける恐れがあるとし、法務省側の控訴を棄却した。同省側が上告せず、同九月、確定した。

 男性は現在、塗装工のアルバイトで生活。判決後に東京入管に二度出頭したが「難民認定が出ない理由を説明してくれない」と話している。

 法務省入国管理局難民認定室は「一般的に判決を尊重して速やかに処理するが、個別の事情で対応は異なる。在留資格を出すまでの生活支援は関与するところではなく、理解していただくしかない」としている。
(中国新聞6月8日)