■働き方だけでなく生き方そのものを自分で設計すること。
それがワーク・ライフ・バランス。
Aさんのお話から2つのことが見えてきました。1つは、人とのつながり、地域とのつながりを実感しながら働くという働き方そのものが、すでに生活と仕事が調和し相乗効果を持つ「WLB」を実現した働き方ではないかということです。雇用関係を中心とした働き方ではなく、個の付き合いを重んじた働き方をすることで仕事が生活と対峙するものではなく、仕事をすることが個人の生活そのものにいい調和をもたらすものになるのではないでしょうか。たとえば、Aさんのように仕事を通じて、家族と新しい関係を築くきっかけや自分の価値に気づくこと。また、反対にこれまでの家庭での経験が仕事のやり方や動機付けに活かされること。この場合、「仕事/家庭」ではなくて、それぞれの活動にいい影響を与える相乗効果がもたらされているように見えます。
従来の朝勤めに出て夜帰る働き方では、仕事=公、生活=私という明確な区分が存在します。公的な領域が増えることで私生活に(たとえば少子化や過労死など)影響を及ぼす悪循環を断つためにWLBの提唱がなされています。具体的な施策として、ワークシェアリング、時間短縮労働、正規/非正規雇用の柔軟な対応、出産育児の休業体制の整備・・・など、いずれも「一定の勤務時間は仕事にコミットしてもらい、それ以外の時間は個人の自由に開放される」という時間を軸とした個人生活の分断がされているように思われます。
仕事に求めるものは個人によって様々です。生活の糧のために働かざるを得ず生活と仕事の調和など望むべくもない状態もあります。その点では、Aさんのような例は恵まれているかもしれません。現在でも7割の女性が出産時までに一旦仕事を辞めるといわれています。子どもが生まれるとそれまでの働き方では仕事と生活の調和が図れないことが原因と考えられます。さらに彼女たちの多くは長く仕事を離れるために労働者としての市場価値は下がります。家庭や子育ての経験は従来の労働市場では評価の対象にならないからです。このようにライフの部分がワークと無関係で相乗効果を持たない働き方では、女性にとって本当のWLBの実現は難しいのではないでしょうか。CBに代表される生活体験に根ざした多様な働き方こそ従来の「勤める」タイプの仕事にはできない仕事と生活の調和が図られるのではないでしょうか。(藤原)
(会報「万里夢」2007.07.01特集より)