「アートin湯治(AIT)」参加アーティストは主に宮城ゆかりの、もしくは東鳴子と何らかの関係のある方を選んでいますが、この人はまさに「地元アーティスト」というにふさわしい方です。
大場順一さん。鳴子のお隣の町・岩出山に生まれ、現在は鳴子のヘソ・潟沼で仕事をしているという「生粋の湯治アーティスト」です。
その大場さんが今回取り組んだのが、「穴」でした。
大場さんはこれまでに宮城県の蔵王、そして松島で「穴」を掘るインスタレーションを制作しています。仕事でボーリング作業などの経験がある大場さんは、目に見えないもの、たとえば地中がどうなっているのかを可視化する具体的な手段として、穴を掘るという本作品を発想したといいます。
今回は鳴子での作品ということで、タイトルは「NARUKO」。亡き友へささげる作品なんだと、飲み会の席でもらしていました。
しかし、観客を前にした大場さんはひらすら寡黙です。
「僕の作品は、説明するようなものじゃないでしょ。見たとおりのものです」
観客は穴のまわりを歩いたり、穴の中に入ってその深さを体で感じたりしていました。
まさに地球を彫刻する、というのは、こういうことを言うのだろうと思います。
残念ながら、大場さんの作品はAITから一週間後、埋められ、もとの地面へと戻ってしまいました。しかし、それはまさに「インスタレーション」というにふさわしい作品でした。
(コメント:門脇篤)