松山市・フライブルクによる国際共同芸術文化事業 報告

カコア梶原です。
今年7月にドイツ・フライブルクにて行われました事業についての概要を
お伝えしておきます。今回の事業のようにカコアの点の活動が線になっ
て面になり最終的に球になることを願います。

松山市・フライブルクによる国際共同芸術文化事業

【企画概要】
本企画は、姉妹都市である松山・フライブルク両市における国際芸術文化交流を深め、より発展的な文化活動を推進するという目的で、松山を拠点に国内外で活動を広げるダンサー・俳優が、フライブルク在住のアーティストと共に、フライブルク市において舞台芸術作品の共同創作を行うものです。ダンサー・俳優がフ市に滞在し、同市の地域劇場スタッフや住民と交流を深めながら舞台作品の創作・公演を行います。
この企画は、2005年に松山市における国際交流事業「ドイツ フライブルク5人の芸術家展」にて来松した美術家Palm氏、Frattini 氏とyummydanceとの交流、今年「時の静寂」公演で1月に来松した仮面劇集団Theater R.A.B.と俳優との交流をさらに進化・熟成させるために行うものです。フ市での共同創作期間を1〜2週間設けます。両市での創作活動を経て国際的な舞台発表の場と経験を重ね、そしてそこで生まれたものが、広く国内外で評価を得るような芸術的価値を持つ強度のある作品づくりを目指すと同時に、海外での公演活動の制作業務の基盤を作る事業とします。世界規模での「地方の時代」をアピールする先駆的活動として、松山・フライブルク市から生まれる、等身大のネットワークが連携した‘実のある’文化交流の場を生み出すことがねらいです。

◎フライブルク・松山 国際共同芸術文化事業 (ダンス)

Yummydance+Manuel/Frattini+HansjorgPalm+EmiMiyoshi
「schwerpunktveragerung」滞在型作品制作+公演プロジェクト

事業内容
■滞在日時 :2007年 6月23日〜7月12日
 (※作品制作期間 6月24日〜7月8日、 7月10、11日*)
 *作品の映像撮影含む
■舞台公演 :2007年 7月6日 7日 20:00 開演 (観客動員: 122人)
■公演場所 :E−WERK 劇場(ドイツ・フライブルク市) 
■実験的クリエイティブワークショップ/芸術文化交流として、
 公開リハーサル(ランスルーショウイング)・
フィードバック アフタートークを実施(無料)
(期間:7月2〜5日 / 観客動員のべ 41人)

◎フライブルク・松山 国際共同芸術文化事業 (演劇)

「Life! Live?」 滞在型作品制作+公演プロジェクト

事業内容
■滞在日時 :2007年 7月2日〜7月9日
 (※作品制作期間 7月3日〜7月7日) 
■舞台公演 :2007年 7月7日 18:30 開演 (観客動員: 89人)
■公演場所 :E−WERK 劇場(ドイツ・フライブルク市) 
■広報のためのパフォーマンス:フライブルク市テントフェス
(期間:7月4日 / 観客動員 約150人)

松山市・フライブルクによる国際共同芸術文化事業実行委員会

◆ダンス
宇都宮 忍 yummydance
戒田 美由紀 yummydance
合田 緑 yummydance
高橋 砂織 yummydance
得居 幸 yummydance
三好 絵美 PrettyUgly Tanz Koln
Munuel Frattini 画家、オブジェ作家
Haunsjorg Palm ビデオパフォーマンス・オブジェ作家

◆演劇
桝形 浩人 劇団P.Sみそ汁定食
山本 清文 劇団P.Sみそ汁定食
梶原 剛 劇団無限蒸気社
Franziska Braegger Theater R.A.B.
Len Shirts Theater R.A.B.

事務局担当:梶原

主催:松山市・フライブルクによる国際共同芸術文化事業 実行委員会
共催:財団法人 松山国際交流協会

■国際共同制作+公演(ダンス)を終えて

*今回のダンスプロジェクトのフライブルク訪問は、2005年に松山市の企画でダンスと美術のコラボレーション作品制作+初演をして以来、約2年間のアーティスト間のやりとりが続き、そのプロジェクトの継続という形でアーティスト派遣が実現した。今回は、前回のプロジェクトよりも制作期間を長くとり、より深いコラボレーションワークをするべく、いい作品を生み出すことに力を注いだ3週間だった。
作品づくりでは、前回松山でのコラボレーションで経験したクリエイトの過程よりも、さらに今回はお互いの領域に濃くアプローチ仕合い、作品に反映する共同作業を発展させることができた。ダンスと美術、お互いの表現方法が違う。だからこそ、出てくるアイデアが、自分だけなら思いつかない方向から来る。ジャンルの違いもあるし、文化的な価値観の違いもある。実際上手くいかないことも過程の中には沢山あり、理解し共有するには、いつもやっている自分の方法を一旦置いて、時には捨てて、半ば強引にトライするくらいの勢いでやってみる。そこで感じる異物感、(心地よいこともあるし、気持ち悪いこともある)は最初混沌としていてどんなカタチになっているのか良く解らない。それは初めて経験したことのないものを口にした時のとまどいとも似ている。その様なアーティスト間の、等身大のぶつかり合いや共振するやりとり事体が、そのまま作品の待つ好奇心や刺激的なエネルギーになっていった。それは作品の核の表現になっていき、「対話」するために、お互いの地域や国境や個人の価値観を行き来する「重点を動かす」というコンセプトがよりクリアに表現できる手ががりになったと思う。
*姉妹都市の文化交流として、お互いの文化作品を見せ合って親交を深めるだけではなくて、そこから一歩踏み込んで新しい価値観のあるオリジナルの作品を、共同制作できたのがとても大きい刺激となった。実際にお互いの持っている力を発揮しあって、ガッツリ向き合って形にのこる作品を生み出す。それが、松山で活動する自分たちだけでも、フライブルクで活動する彼らだけでも出来ない、一緒に全力で作品を共同制作した先に生まれる濃度の濃い作品として、現地で評価を頂ける成果を出せたのでよかった。そのことが、松山から派遣されたアーティストの自分たちの立場として、なによりも大きく嬉しい成果だった。2日間の公演は両日ともありがたいことにソールドアウトで、成功のうちに終えることが出来た。そして今回発表した作品を、メディアや劇場のディレクター・ドイツのアート関係者にも大変関心を持っていただき今後に繋がるいい反応をいただいたので、このダンスプロジェクトのさらなる発展に希望が持て、手ごたえを感じた。また、それを通じて自分たちが活動している松山のアートシーンにも同時に関心を持ってもらえ、会場では様々な質問が終演後飛び出したのでとても嬉しかった。松山発のダンスが、坊ちゃんや温泉だけではない新しい文化発信のエネルギーとして、世界に飛び出していく力になれるよう、今後も研鑽を積みたい。そして、今回姉妹都市であるフライブルクと松山のアーティスト交流で生まれたこの作品は、両地域にアーティストが滞在し、行き来することなしには生まれなかった。滞在型作品制作の意義に共感して今回助成してくださった両市に感謝します。そして、ひとつのきっかけで生まれた企画を継続することで実のなる文化交流の刺激がおこり、触発された人々がそれを地域に持ち帰り、豊かな文化の土壌をつくるリーダーになっていく。一回一回の単発で終わる打ち上げ花火のような交流だと、そのときは盛り上がるがその後そのことで生まれた新しい文化の土壌を発展させていくことが難しい場合が多い中、今回のこのダンスプロジェクトを2度目の継続という企画で参加させてもらえた立場から、そのことの大切さと成果を強く実感しました。

*また、今回のダンスプロジェクトは限られた時間の中で、作品を共同制作する傍ら、作品が生まれる過程を公開する実験的ワークショップとして、「公開リハーサル+アフタートーク」を公演直前の3日間実施しました。アーティストにとって、まだ完成されていない段階で作品の創作経過を開示することは、勇気のいる繊細なことだが、今回の作品のコンセプト「schwerpunktveragerung=重点を動かす」に沿った、地域の人々とアーティスト、国境と地域同士を超えて、対話する、そのことが作品になっていく、ということと直結した、とても有意義な成果を持てた試みとなった。実際、3日間で多くの人がリハーサル現場を訪れ、アフタートークではとても有意義なフィードバックをしてくれた。公開リハーサルとして現場を開放していた時間は15時〜20時と長く、いつもいいタイミングで作品パートが観られるわけではない。時には、煮詰まってミーティング中だったり、上手くいかない映像の仕掛けに四苦八苦する場面にも出会う。けれど、そんな作品が生まれていく様々な過程をも含めて、それ自体を好奇心を持って知ろうとする方が沢山いた。自分たちが当初想像していたよりも沢山のフライブルクの地域住民の方が、私たちの作品に興味関心を持ってくれ、しかもその方々たちはアートの専門家ではなく一般の地域住民の幅広い世代の人々だった。フライブルクの人々が、アートに日常生活レベルで高い関心と興味を持っている意識の高さを改めて感じた。
このような、フライブルクの地域住民の人々と関わりながら、作品制作と公演を行えたのも大変有意義な経験で、今回活動を通じて得たものを今後松山、フライブルクの文化交流の発展に向けて、またそれぞれの地域の文化活性化の活動に生かしていきたい。

■国際共同制作+公演(演劇)を終えて

抽象的な表現になるが、今回の共同創作において、もちろん価値観の違いは大きく存在したが作品に対する取り組み方では同じ熱いものを感じることが出来た。今後、この取り組みを、良い形で継続させていくためには、やはり両市においてキーマンとなるアーティスト、プロデューサー、コーディネーターが必要になる。作品制作だけでは、アーティスト間の関係性は深まっていくものの、広がりを持たせる要因としては不十分である。今後行われる取り組みの、制作面のバックアップが出来る存在が必要不可欠である。両市ともに財政難が叫ばれる今、民間レベルでの強いつながりと行動力が益々期待される。予算面だけではなく、情報の提供、現地での協力体制など明確になって行けば意外と敷居の低い交流が出来る予感がしている。松山が文化の街として誇れるものになるためには早急に整備すべき課題だと感じる。

◆その他、渡航に関してのアドバイスや共同制作でのヒントなど
 ダンスも演劇も協力出来ますので、今後取り組む予定のある方
 はご相談下さい!

 梶原 gogo@yf6.so-net.ne.jp