秋の恒例、国際福祉機器展(HCR)に行ってきました。国内最大の福祉機器展示会で、期間中は全国から福祉関係者やユーザー、学生などが集まってきます。国内527社、海外15ヵ国・地域53社より、25,000点にものぼる福祉機器が展示されました。
駐車場には社会福祉協議会のバスが何台も来ていて、ナンバーを見ると東北地方だったりします。それだけユーザーにとっては待ちわびている展示会なのです。というのも、福祉機器を実際に試しながら選べる貴重な機会だからです。都内などの一部を除けば、福祉機器を試用できる施設はほとんどありませんので、ユーザーはカタログ買いをせざるを得ない。そこでHCRに出向いて品定めをしようじゃないかというユーザーが多いのです。
とくに熱心な親たちが目立ちます。車いすや歩行器などをきちんと選び、フィッティングすることで、〝自分で歩ける〟〝自分で移動できる〟といったできることが沢山あると知られるようになってきたから。地元の理学療法士(PT)や福祉機器の販売店、福祉窓口の職員、医者などに〝フィッティング〟の専門知識がないケースは多く、汎用品を使っているために可能性が制限されていることが多いのです。そこでスペシャルニーズに対応できる専門メーカーのアドバイスやフィッティング技術などに期待して来場しているのです。
ただね、来場者に話を聞いてみると、フィッティングがどうしたという難しいことばかりじゃなくって、「こんな可愛い整形靴あるんだ〜」といったキッズファッションを選ぶショッピング感覚のまんまの親も多く、とっても楽しそうに会場を巡っているのが印象的でした。
今年のHCRでは、子ども向け機器などを集めた「子ども広場」が大幅拡充されたことが目玉でした。福祉の世界でも子育て支援の機運が高まってきてますね。可愛らしい車いすがずらりと並び、工夫された遊具に夢中の子どもたち。会場でここだけ子育てサロンの雰囲気でした。
会場で気になった福祉機器をいくつか紹介しましょう。
かぶりんぼう/橋本義肢製作所
てんかん等の子どもたちが使うヘッドギアも可愛いデザインがいっぱい。これは衝撃吸収能力はそのままにかわいくドレスアップするヘッドギア用のカバーなんです。市販されているほとんどのヘッドギアに装着可能で価格は5〜6000円。
入浴用リフト ネプチューン/アビリティーズ・ケアネット
障がいのある子どもを介助している方にぜひすすめたいのが入浴用リフトです。子どもの身体は成長します。体重だってすぐに増えますよ。だから今、軽々と入浴介助できても、気付いたときには腰痛!ってケースがとても多いのです。痛い!って必要に迫られてからでは遅いのです。「今は大丈夫」っていう意識も働くのか普及は進んでいませんが、入浴介助をしているなら、入浴リフトはぜひ導入を検討してください。
このネプチューンはリフトというよりも昇降機ですね。座が昇降し、トランスファーボードも自動で設置されるため浴槽への出入りや車いすへの移乗介助の負担が劇的に軽減されるでしょう。秀逸なのは簡単に設置でき、しかも壁面や浴槽を傷つけることがない点。これならば賃貸住宅でも使えますね。また昇降モーターは手元の大型スイッチでコントロールします。ユニバーサルデザインで操作しやすく、手に機能障害のある人も自分で扱える自立支援の機能性があります。価格は310800円。機能的に制限のある低価格リフトと同レベルの価格設定というのもうれしいですね。
リフトの導入に使える公的制度があります。全国的な制度としては「日常生活用具」の給付にリフトが入っています。従来は上限257500円(10%自己負担。ただし上限37200円)と厚労省が定めていましたが、この上限金額は撤廃されています。ただし、各自治体はこの金額水準で制度を運用しているようですね。この他の制度を用意する自治体もあります。東京都の場合、「住宅設備改善費給付」の「屋内移動設備」がリフトに該当する。上限金額は機器本体979000円、設備費353000円。制度を利用するには審査などが必要。申請・相談は市区町村の福祉窓口となる。また今回紹介したネプチューンは従来の位置移動が可能なつり下げ式リフトと構造がまったくことなるため制度を適用できるかは各自治体の判断によるでしょう。
マッスルスーツ/東京理科大学工学部小林研究室、日立メディコ
パワーアシストスーツ/神奈川工科大学
のんじゃこりゃ!ってなパワースーツ。着用することで人間の動きをサポートする動作補助ウェアだそうです。姿勢補助、筋肉補助で介助が楽々というプレゼンテーションをしていました。いわばモビルスーツ(byガンダム)の福祉転用ですね。工場や倉庫、物流センターでの使用は想像しやすいですが、介助でねぇ。みなさん、ど〜ですか? ただ介助ロボットの開発は各社盛んでして、「介助ロボット」「介護ロボット」でネット検索してみると、これでもかと言うほど論文やらニュースリリースがヒットするほど。腰痛で悩む介助者は多いですから近い将来、世話になることがあるかも知れませんね。
次回は移動支援機器についていくつかレポートします。