お風呂からあがって売店をのぞきます。
各旅館とも、個性がでる売店をもっていたりしますが、勘七湯さんのところはかなりレトロ感がたっぷり。けっこうここでアートやったらいいものができそうな予感がします。別館のみならず、売店までもアートに占拠されてしまうかもしれません、勘七湯。
しかもご主人がこれまたいい人なので、なるべくムダ金を使わせないように、「これ買ってもしかたないですよ」とか「あとまた来たときにでも」とかまるっきり商売っけがありません。
結局、鬼首でつくっている発泡酒「御殿湯浪漫」を買いました。ラベルは東鳴子唯一の喫茶店「はっぴぃ」さんが描いたという鳴子御殿湯駅。温泉街は芸術家だらけですね。ちなみに「はっぴぃ」さんは午前中しか営業していません。
まだ7時だというのに湯治場はもう真夜中のような静けさです。
おなかがすいてきたので千両食堂へ坦々麺を食べに行きます。これがまたうまいんですね。今日はこれを食べるのを楽しみに来たといっても過言ではありません。
うちの優秀なスタッフである妻は中華そばを注文。一口食べるなり、「うまい!」
かなりど真ん中だったようです。ちなみに千両さんはうどん・そばや丼ものなど、なんでもうまいので本当にびっくりです。これが町の食堂たるゆえんですね。
ところで、妻は実は幼い頃に東鳴子で湯治をしたことがある湯治体験者で、ラーメンを食べながら、その当時、ここでラーメンを食べたような気がする、と言い出しました。千両さんも、味はかわってないですよとのこと。そこからかつての千両食堂のようすを再現する記憶の旅がふたりの間ではじまりました。
なんかこれ、すごくアートになりそうな気がします。というより、そうした記憶、その雰囲気って、アートでしか表現できないんじゃないでしょうか。
夜10時くらいに家に着いて、さっそく「御殿湯浪漫」を味見します。お気に入りの黒猫くんのカップで。
うまい。
やっとこれで私の、今年の「アート湯治祭」が終わりました。次は来年へ、です。
(門脇篤)