進化の隣人 ヒトとチンパンジー

松沢哲郎著 岩波新書より

見つめ合う、微笑み合う

チンパンジーのあかんぼうは生まれたときから
おかあさんにしがみつく
おかあさんはこどもを抱きしめる
しがみつき・抱きしめる親子関係は
霊長類に共通する基盤だと申し上げました

それだけではなくてヒトやチンパンジーの場合には
互いに見つめ合います
おかあさんと子どもが顔と顔を見合わせる
ごく日常的に普通に認められるわけです

そうやってまなざしをかわすだけではなくて
チンパンジーのあかちゃんは生まれながらにして
微笑むようにできているというお話を親子関係のところでしました
新生児微笑です
目を閉じたまま誰に向かってというわけではないのですが
ニッと自然に微笑むわけです

中略

ヒトのあかんぼうも同じです
ヒトのあかんぼうも生後3ヶ月ぐらいになると
新生児微笑ではなくお母さんの顔を見ながら
にっこりと微笑みます
「新生児微笑」と区別して「3ヶ月微笑」とか「社会的微笑」と呼ばれます
機械的に微笑むのではなくて
目の前にいる人の顔を見て微笑むわけです

興味深いことは人の顔写真を見せると
顔写真に対してもにっこりと笑いかけます
大きな口をあけてニッとします
それからかお写真でいえば生後1ヶ月頃から
明瞭に母親の顔を好んで見るようになります
誰でもが同じななのではなくて
親を他の個体から識別しているわけです

<ムスカリはブドウの実に似た花をつけます>