昨日、奈良県宇陀市農林会館で開かれた「有機農業の可能性と役割(〜生命をつなぐ有機農業〜)」と題した講演会に往復4時間近くかけて参加してきました。
遠方にもかかわらず奈良県周辺の府県の参加もあり、まず、関心の高さに驚き、そして若い方が多いのに、これまた驚きました。
講師は高知県で平成10年から有機栽培に挑戦し、さらには「有機のがっこう土佐塾」の塾長である山下一穂(有機農業促進協議会会長)さんです。全国的に著名な方であり、かつ、あらゆる挑戦・工夫と改善・経験を積み重ねて有機栽培を続けておられる方だけに、お話一つ一つに説得力があり、あっという間に講演時間が過ぎました。
冒頭、有機農業が日本人再生に原点であると、農林水産業への認識欠如を回復し、人が共有していくための役割に農業を据えることが、TPPや日本経済の混迷状況を考えると、改めて必要と痛感すると語られ、土佐で実際に有機栽培を行ってきた状況をスライド映写され、農薬や化学肥料を一切使用せず、自然生態系に依拠した栽培手法で、驚くほどの作物が育つことを知りました。大根、ニンジン、キャベツ、ナスビなど収穫物の色艶は、特に新鮮そのものでした。とりわけ、緑肥(ソルゴー)を土にすきこみ、ゆっくり時間をかけて土づくりをしている様子や他の有機資源を大いにしかも頭を使って工夫されて使用されている光景に何度もびっくりでした。
なによりも、①農に誇りを絶えず持つことでクリエイティブ(創意工夫)な世界が広がること、②産消連携の域を超えてより消費者と結びつく農の必要性、③有機農法が美味しく、高品質で高価値の作物を作りだす、などと語られ、回顧(回帰)主義でないが、農業は幼い時代の泥んこ遊びでもあり、生命をつなぐ産業である。ともいわれました。
この間、いろいろなお話を、多くの方からお聞きしてきましたが、実に有意義な時間を過ごせた講演会でした。ちなみに、現在当NPOが進めている「若者による農業分野チャレンジ事業」の若者4人も聴講にいきました。
感じること、感性を持つこと、そこから創意を編み出すこと、匠の技とはこういうことでしょうか。味わい深い心に浸みる時間でした。匠の人生観を感じて帰路につきました。