第2回『みそ仕込み〜「袋の味」から「おふくろの味」へ』(4/9掲載)

こうじ作りとミソの仕込みを学んだのは、35年前のことになる。古紙回収の準備と併行して企画した「自然食を楽しむ集い」だった。以来、わが家はもちろん、使い捨て時代を考える会の多くの会員宅ではミソの手づくりがつづけられている。ミソはくらしを反省する多くの機会を与えてくれた。
 当時、使い捨ては美徳とする風潮の中で、ビニール包装の加工食品が普及一般化し拡大していた。生活の洋風化近代化である。街角の魚屋さん、八百屋さんが消え、スーパーで買い物をすることになるが、食品添加物使用のものばかりだった。
 食べ物はいのちだから変質腐敗を免れない。商品としては扱いにくいから、着色料や甘味料などの五感をたぶらかす化学物質や保存料という名の防腐剤が使用される。ガンなどさまざまな病気の原因としては心配なことである。しかし、家族の健康と幸せを願うなら、仕方がないでは済まされない。
 お金を出して、手軽に食卓を、というところに落とし穴があるのだ。というわけで、手づくりの大切さに注目した。手前ミソという言葉の通り、自分で作ってみると特別美味。自慢のミソの料理は楽しい。スーパー経由の「袋の味」から愛情仕込みの「おふくろの味」復活である。
 食は生きる基本である。食の商品化が進んだところに現代社会の危険の根がある。生産と消費がお金によって距てられたことが問題である。私たちは両者を心で直結する自分たちの流通組織「安全農産供給センター」を作った。以来、33年間、ささやかな手づくりの動きが食卓の安全を支えてきた。