「国籍法は違憲」婚外子10人に日本国籍 最高裁判決(朝日新聞 2008年6月4日)
結婚していない日本人の父とフィリピン人の母から生まれた子ども10人(8〜14歳)が、日本国籍の確認を国に求めた訴訟で、最高裁大法廷(裁判長・島田仁郎(にろう)長官)は4日、10人全員に日本国籍を認めた。生まれた後に父から認知されても、両親が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない現在の国籍法は、憲法14条の「法の下の平等」に反すると判断した。
結婚しているかによる区別が違憲とされたのは初めて。同じ国籍問題を抱える子どもについて正確な統計はないが、国内だけで数万人という推計があり、海外にも相当数いるとみられる。法務省は国籍法の改正を迫られる。
また、最高裁が法律を違憲と判断した判決は、05年に海外に住む日本人に選挙権を認めない公職選挙法を違憲として以来で、戦後8件目。
国籍法の2条1号によれば、父母が結婚していない「婚外子」でも、生まれる前の段階で父の認知があれば、国籍を取得できる。一方、国籍法3条1項は、生まれた後に認知された場合に父母が結婚しなければ国籍を得られないと定めた。その違いは、出生した時点で子どもの国籍を確定させるのが大原則だという考え方による。
この国籍法を違憲と判断したのは、15人の裁判官のうち12人。うち9人が多数意見で「84年の立法当時は結婚によって日本との結びつきを区別することに理由があったが、その後に国内的、国際的な社会環境の変化があった」と指摘。その例として、家族生活や親子関係の意識の変化や実態の多様化、認知だけで国籍を認める諸外国の法改正を挙げた。
遅くとも、原告たちが国籍取得を法務局に届け出た03〜05年には、結婚を要件に国籍を区別するのは不合理な差別になっていたと認定。3条1項のうち結婚の要件だけを無効にして、要件を満たせば国籍を認めると結論づけた。
一方、同じ違憲でも3人の裁判官は理由が異なり、本来は国会が立法で解決するべきだったのに怠った「立法の不作為」を違憲とする立場を採った。3人のうち1人は「現行法の拡張解釈で違憲状態を解消できる」として子どもに国籍を認めたが、他の2人は「違憲状態を是正するには、立法によるべきだ」として、国籍を認めなかった。
このほか、3人の裁判官は「婚外子は両親の結婚と父親の認知により、日本との密接な結びつきをもつ」という法務省の見解を認め、「合憲」とする反対意見を述べた。
結局、子どもに国籍を認めたのは10人の裁判官。5人は国籍を認めなかった。この判決により、原告の10人の子どもたちは、国籍取得を法務局に届け出た03〜05年の時点で日本国籍を得たことになる。
一審・東京地裁は違憲と判断したが、二審・東京高裁は憲法判断に踏み込まずに子ども側の逆転敗訴としていた。(岩田清隆)