第11回『農村に移り住んで 身近に動物、感動の連続』(6/25掲載 京都新聞)

 私の住む南丹市の農村部では、夜の十時は鹿が動き出す時間です。その頃、車を走らせれば多くの鹿に遭遇します。ところで、なぜ車なのか。動物園と違い、檻という安全装置がないと、鹿などの野生動物は恐怖感からかことのほか大きく感じます。そのため、サファリパークのように車越しでないと対面できないのです。
うり坊(イノシシの子供)が、軒先の地面の土を鼻先でほじくり返していたこともありました。頭と尾の区別が付かない、ずんぐりとしたその姿は、なんともかわいいものです。しかし、近くにいるであろう母親の存在が気になり、少しだけ開けた戸の隙間から眺めるにとどめました。晩秋に家の裏の柿の木に猿の群れが来ていたこともありました。屋根から“ボコン、ボコン”と妙な音がするので、不思議に思って外に出てみると、もぎり取った柿を味見し、まずいものを我が家の屋根に向かって投げ捨てているのです。その音が、ボコン、ボコン・・・。梅雨時には、開け放った窓から蛍が舞い込んできたこともあります。街から移住してきた私たち家族にとっては、本当に感動の出来事でした。
このような場所ですが、京都市内からは、車で一時間とかかりません。私たちの会は、大量生産、大量消費の社会に対する疑問からスタートし、安全な食の流通へとその活動を広げてきました。しかし最近、その安全な食料を支えてきた農村が、高齢化と過疎で活力を失いつつあります。ここも、そうした農村のひとつです。どうしたら農村が活気あるものになるのか。多くの方の知恵をお借りできればと思っています。