第14回『天ぷら廃油の粉石けん 湿疹に気付き、運動広がる』(7/16掲載 京都新聞)

 私は天ぷら廃油を回収して粉石けんを作っています。
私は農家に生まれ育ちました。小さい頃より水田には素足で入って、魚を捕ったり農作業を手伝ったりしていました。水と触れ、小さな生き物たちと遊んだものでした。ところが昭和30年代後半には、素足で水田に入った後には必ず足首などに湿疹ができるようになってきました。小川や水田からは小さな生物や魚達が姿を消していきました。これは洗剤や農薬、化学肥料のせいだと感じました。
しかし農業の機械化につれ、直接水田に足を入れる事から遠ざかり、そのような被害は気付かれなくなってきました。
粉石けん売りを始めた頃は二槽式洗濯機が中心でした。直接洗濯槽に手を入れる事が多い為、主婦湿疹にかかる人がたくさん見られました。また布製おむつだった赤ちゃんのおしりに湿疹ができました。直接合成洗剤に触れる事により、多くの人々が被害に気付き、石けん運動が広がりました。しかし全自動洗濯機の普及に伴い、水に触れることが少なくなり、又赤ちゃんは紙おむつに変わって行った為、主婦湿疹やおむつかぶれの声は聞こえなくなっていきました。当然粉石けんの使用も減ってしまいました。
一時期日本中が石けん運動でにぎわいましたが、何も解決されないまま人々は水に触れる事から遠ざかっていき、その事を忘れていきました。物や人に直接触れる事から遠ざかっていくと、その本質から離れていき、違う方向に進んでいくように思います。