松の湯と奥沢、田園調布の区画整理事業

前回、玉川全円耕地整理の続きをお送りします。

大きめの邸宅が並ぶ松力の湯のあたりから東に向い、世田谷区奥沢に入ると、少し緑の多い、デザインも洋風の匂いが漂ってきます。

このすぐ南側は有名な田園調布です。田園調布は今でこそ高級住宅地と皆思われていますが、もともとは目黒蒲田電鉄が勤め人向の戸建て住宅分譲を目的に、土地区画整理事業で整備した住宅地(分譲時は多摩川台住宅地といったようです。)でした。

 田園調布もそうですが、東京では等々力、用賀、西が丘、関西では浜寺、高師浜、芦屋六麓荘など、日本を代表する郊外住宅地の多くは、戦前に土地区画整理事業(または耕地整理)で整備した住宅地でした。当時は比較的土地代が安価な郊外に、高い水準の住環境をめざして土地区画整理事業で分譲住宅地を整備したのですが、戦後の都市圏の拡大とともに、相対的に都心との距離が近くなって、いつの間にか高級住宅街に変わっていきました。

 さらに東横線の踏切を渡り、目蒲線(今は目黒線というのですが、私としては絶対に「目蒲線 めかません」と呼びたい。)の踏切を越えて、住宅街から奥沢駅前の商店街にかかる少し手前に「松の湯」はあります。

 松の湯は和風ですが、タイルなども新しく、品のよい内装になっています。下足の鍵が脱衣箱の鍵と共通になっているのは初めての経験でした。玄関の下足箱に下足を入れて鍵を抜き、番台で風呂銭をはらって、下足の鍵で同じ番号の脱衣箱を開けて使うシステムです。自分の脱衣箱がどこになるかどきどきします。

 それから東京ではめずらしくジェットなど各種の浴槽があるのですが、中央の浴槽が円形、しかも内部で湯が円周方向に噴き出していて、流水プールのようでけっこうおもしろかったです。意外に意欲的な銭湯でした。

松の湯 東京都世田谷区奥沢4−24−2 東急目黒線奥沢駅から5分 営業時間 15:30〜23:30 土曜お休み