エクアドルツアー報告その2

こんにちは。後藤彰@福岡赤村です。ウインドファーム(WF)が主催して、先日行ってきたエクアドル・インタグオルタナティブツアーの報告を簡単にします。

僕からは、アウキさんとの交流、AACRI(インタグ有機コーヒー生産者組合)10周年のこと、カルロス・ソリージャさんやアンニャさんと雲霧林のこと植樹のことを報告します。

「ハチドリのひとしずく」というインタグ(エクアドル)とトセパン(メキシコ)のブレンドコーヒーがあります。
http://namakemono.shop-pro.jp/?pid=4193403
とってもマイルドで飲みやすく美味しいと評判です!

このコーヒーのナマクラ販売分、WF販売分の一部を生産地に還元することもしてきました。主には、以下のところでナマクラから預かったお金を使わせてもらいました。

★生産者団体であるAACRIへの寄付
★AACRI関連の2次林への植林活動経費
★世話人のアンニャ・ライトさんが運営するエル・ミラグロへの寄付
★エル・ミラグロでの植林活動経費
★鉱山開発問題などへの反対運動を続けているDECOINへの寄付
★カルロス・ソリージャさんが運営するラ・フロリダ(深い雲霧林の中にあります)の「森のガーディアン」への寄付
★WF&ナマクラ&スローウォーターカフェの仕事をエクアドルでこなすワダアヤさんの運営するクリキンディへの寄付
★ワダアヤさんが住むエルバタン村での植林活動経費

森を作る活動というと、植林活動が真っ先に思い浮かびます。今回のツアーでももちろん植林もしたのですが、インタグ地域のいろいろな活動があって森が守られ育っているということを改めて実感しました。

例えば、情報発信の大切さ。インタグには、ラジオインタグやインタグ新聞というメディアがあります。そういったメディアが鉱山開発の問題点や大規模開発ではないオルタナティブな情報を発信しています。それが地道に続けられることで、コーヒー生産者が自信を持ってコーヒー栽培に取り組んだり、販路が拡がったりしています。

WF流のフェアトレードでは、買取価格の面だけではなくて、そういったつながりを今後も大切にしたいなぁ、と改めて強く思いました。

以下、ツアー報告の一部です。
全文は近々WFのHPでも写真を入れて公開します。まずは、ナマクラに関係の深い部分の報告をしますね。

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2008 エクアドル・オルタナティブツアー
ナマクラへの報告

ウインドファーム:文責:後藤 彰
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9月24日〜10月4日まで、エクアドル・オルタナティブツアーという設定で9名+αのメンバーがインタグコーヒーの産地10泊11日間の旅をしてきました。主な目的はウインドファーム(WF)のフェアトレード・パートナーである生産者団体AACRI(インタグ有機コーヒー生産者組合)の10周年を一緒にお祝いすることでした。

AACRIは、世界有数の生物多様性を誇るインタグの森林の中で質の良いコーヒーを育てている生産者の組織です。豊かな森を破壊する大規模鉱山開発への代替案として森林農法によるコーヒー栽培を展開してきました。設立とほぼ並行してWFとのフェアトレードを開始して丸10年。

ナマケモノ倶楽部世話人でもある弊社代表中村隆市は「10年間インタグコーヒーのフェアトレードが続いたこと、AACRIも潰れずに存続し続けていることが素直に嬉しい」と語っていました。

10年間のフェアトレードの継続は、美味しいコーヒーを育てる生産者、コーヒーを輸入、焙煎、販売するWF、そして「美味しい」と言って飲んでくださる消費者の方々の存在なしにはもちろん考えられません。今回の旅で改めて感じたことは、生産、販売、消費だけではなく、インタグを取り巻く様々な団体や活動、社会情勢があってインタグコーヒーのフェアトレードが成立しているということでした。

11日間の滞在を通して一杯のコーヒーから広がる豊かなつながりや営み、圧倒的な自然の存在感などを感じることができたツアーとなりました。ツアー自体はエコヴィレッジ計画があるプカラという町の訪問、アンデス先住民のサンダル職人訪問、通訳兼コーディネーターで大活躍してくれたWFエクアドルスタッフのワダアヤが運営するクリキンディ訪問などなど盛りだくさんでした。
今回はナマクラと関わる部分を軸にツアーの様子を簡単に報告します。

【アウキ知事との交流】
多用な中、アウキさんとパートナーのアルカマリさんも時間を取ってくれ、自宅で昼食会を開いてくれました。美味しい手作りの食事をいただきながら、アウキさんと政治について、平和について、大切にしている価値観について、いろいろな話をすることが出来ました。

「政治とは市民が自分達の住む地域や社会をより良くしていくための道具なのです。そこでは、社会、経済、文化、環境が出会います。その政治の場に自由意志で参加できること、お互いの意見を尊重しつつ納得できるまで話し合いを重ねること、そういったことを通して本当の意味での発展を実現していくのです。そうすることで、「いのち」「平穏」「調和」「幸せ」と同義の平和が訪れるでしょう」とアウキさんは語っていました。

12年間郡政を担ってきたアウキさんのより良い社会を求める想いと強いヴィジョン、その行動力から学ぶことがたくさんありそうです。

アウキさんはとても優しい人で、メンバーが忘れた手帳を直々に届けてくれ、さらには「記念にどうぞ!」と彼が敬愛するチェ・ゲバラのポストカードを数種類みんなにプレゼントしてくれました。

インタグコーヒーの生産者と共に10年前に来日したアウキさんとの親交が続いていることが素直に嬉しいことです。

【AACRI10周年イベント】
土けむりの立ち込めるガタガタ道をバスで2時間以上揺られて到着したインタグ。私たちが飲んでいるインタグコーヒーの生産者の方々、関係者の方々が焙煎工場の広場に集って待ってくれていました。

当初は大々的なイベントを考えていたようですが、新しい憲法に対する国民投票の前日に当たってしまい、お酒を飲んでの派手な催し事は禁止。ということで、「家族的な集まり」となりました。それでも総勢60〜70名ほどが集まりました。

10年前にスタートした時には国内販売用コーヒーの焙煎が安定せず、豆が黒焦げになってしまったことや試行錯誤を繰り返しながら販路拡大に努めてきたこと、鉱山開発推進のプレッシャーがとても大きかったことなどの思い出話。

生産者と子どもによるコーヒーの歌とナマケモノ倶楽部の世話人でもあるアンニャ・ライトさんによるエクアドルやナマケモノの歌。
若者によるちょっとセクシーなダンス。お豆とおイモ中心の山盛りの食事。日本からの参加メンバーによるスペイン語でのスピーチ。笑い声と音楽が絶えないアットホームな雰囲気の中での10周年記念となりました。「次の10年もフェアトレードを続け、またたのしくお祝いをしましょう!」との約束もなされました。

【雲霧林へ】
鉱山開発や水力発電所建設が実施されると破壊の危機にさらされる雲霧林にも出会いました。08年6月に来日して東京や福岡でトークショーをしてくれたカルロス・ソリージャさんが維持するラ・フロリダを訪問。

雲霧林には色とりどりの鳥や昆虫たち、色や形、大きさが多様なランやブロメリアなどの花々、1本の樹に1000近くもある着生植物、森を荘厳な雰囲気にするコケ類などなどとても豊かな生物多様性があります。カルロスさんの解説付きで森を散策したり、バードウォッチングをしたり、ランの鑑賞をしたりと森と共にゆったりとした時間を過ごしました。

「森の中に不要ないのちなどない。全てがつながっていて、補い合っているんだ。例えば、ランは100万もの種を作るけど、それが発芽するためにはマイコリージア(菌根)という菌の働きが必要なんだよ。日本には数100種、エクアドルには4000種のランがあると言われているけど、と〜っても小さな菌にその再生産を頼っている。その意味で共生関係にあるんだね。共に頼り合って生きていく。人間もかくありたいものだよ」といった示唆に富むことをカルロスさんはたくさん話してくれました。

カルロスさんの家から森の中を歩いて30分ぐらいのところにあるエル・ミラグロも訪問。アンニャさんが持続可能な暮らしのモデルとして展開するプロジェクトの地です。静けさが漂う森の中に石や土を使った手作りの家、森林農法とパーマカルチャーを組み合わせた農園、シンプルな暮らしがありました。

家の窓ガラスがない理由を尋ねると「ガラスをはめようと思っていたけど、この窓から家の中にハチドリが入ってきたのよ。嬉しくなっちゃって、ガラスはなしにしたの」とアンニャさん。

エル・ミラグロではコーヒーの収穫、植樹、乾燥させたコーヒーの皮取りなどの軽い作業もしました。「コーヒーの収穫ってなんだか面白くて、はまっちゃいました」と黙々とコーヒーの樹に向かう参加者も。

気候、高度、気温、湿度、いろいろな条件が絡まりあって生物多様性を育む雲霧林が存在しています。「森の中でいのちのダイナミックさ、朽ちた木々が次のいのちの栄養になっていく循環、コケの何とも言えぬ存在感を感じた」といった参加者コメントもありました。

森の中で過ごすことで「森を守りたい」「この豊かさを子ども達に残したい」というコーヒー生産者の想いがとてもリアルなものとして感じられます。

【樹を植えましょう】
今回のツアーでは現地の人とメンバーが一緒になって3回の植林を行ないました。これは、コーヒーの売上の一部を産地に還元する活動のひとつでもあります。
クエジャヘの町、アンニャさんがプロジェクトを展開しているエル・ミラグロ、通訳兼コーディネーターを務めたワダアヤが住むエル・バタン村の3箇所です。

それぞれの場所で、参加者が思い思いに樹を植えていきます。土にチッソ固定をしてくれるハンの樹、100年以上生きるアボガド、巨木になるというアカシヤ、すらっと背が高くなる柳、美味しい実をつけるレモン、そしてもちろんコーヒーの樹も。

特にエル・バタン村では地域の人や子ども達と一緒にワイワイガヤガヤにぎやかな植樹風景となりました。また訪問した時に、植えた木々がどのように育っているかとてもたのしみです。

【つながりの中のインタグコーヒー】
旅の振り返り時には、インタグコーヒーの消費者でもある参加者からもいろいろな感想が出ました。
「森と生活が切り離せないということが分かった。日本の暮らしの中で私にできることをしたい」「実際に森林農法の森を見ることで、コーヒー主体でちょっと果樹があるというのではなく、人々が暮らす森の中にコーヒーがあるのだということが見えてきた」「中村氏が10年かけて蒔いてきた種がいろいろな場所で発芽し、育ち、実を付けているように感じた」「生産者の人柄や顔が見えてきた。一杯のコーヒーがそれらを思い出させてくれることになりそう」「現地の人々と触れ合えたことが良かった、『何もない』けど、それで良いと思った」などなど。

10周年を迎えたAACRIとインタグコーヒーは、豊かなつながりの中で持続してきました。

母体でもある環境団体DECOIN、その活動の中心メンバーであり森や水源を守り育てるカルロス・ソリージャ氏、コーヒーの指導員の給与を工面したり国内での販路を作っているトイサンという生産者連合、インタグの豊かさや鉱山開発の問題点などを発信しつづけてきたインタグ新聞と代表のメアリー・エレン氏、WF代表中村を突如出演させてくれたラジオインタグ、子どもから大人まで地域のことを考える人たちが参加可能な民衆議会や識字教育プログラムなどを展開している環境保全郡コタカチとその知事アウキ氏、そして圧倒的な存在感でコーヒーや多様ないのちを育む雲霧林、その森と共に生きる優しい人々。

それぞれの場所と人々を訪ね、交流することを通して、インタグコーヒーとそのフェアトレードが立体的に見えてくる、「つながりは一杯のコーヒーから」という言葉が改めて腑に落ちる、そんな盛りだくさんの旅となりました。

おしまい