空前の大強盗事件

皆さん、歴史上の大事件が進行する只中で、どんな気分で、どうお過ごしですか?

あのマイケル・ムーアが数百万の人々に送ったメールだそうです。英語のままですが、これも歴史に残る文書となるかもしれないので。「現在進行しているのは歴史上最大の強盗事件、3億人が人質にとられている!」と。でも、3億人ってアメリカ人のことしか考えていないようだ。マイケル、でも、ほんとうは世界中が人質にとられているんじゃないの?

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友人諸君

 早速本題に入らせてもらおう。君等がこれを読んでいる、今のこの時、米国史上空前の大強盗事件が起きてるんだ。銃も無しに3億人が人質にとられている。掛け値無しさ、間もなくホワイトハウスを出て行くブッシュと取り巻き連中は、行きがけの駄賃に財務省からごっそり持って行こうとしてる。そうさ、この5年間、お仲間の戦争屋に儲けさせる為に5千億ドル使い込み、お仲間の石油屋には、この2年間ばかりで1千億ドル以上儲けさせた、その上にだ。

 彼等が言葉巧みに色々言ったところで、それは彼等自身と1%の金持ち達が私腹を肥やす為の「恐怖と混乱」という使い古しのトリックでしかないんだ。先週の月曜(9/22)のNYタイムズの一面記事を読んでみればいい、最初の4節だけでも本当のことが分かるさ。

「7千億ドルの金融救済法案の詳細が論じられている最中、ウォールストリートでは、それを利益に転ずる方法が模索され始めていた。」「金融関連企業は、不動産関係だけでなく、ありとあらゆる不良投資を救済対象にするよう圧力をかけてきた。」「それと同時に、投資会社は財務省を言いくるめて、金融機関の資産整理の監督権を得ようとして来た。それは、手数料として年間数億ドルの利益を得られる役割だ。」「誰もが、財務省による不良資産の買い取りに便乗しようとしている。」

 信じがたいね。この混乱を作り出したのは、ウォールストリートとそのお仲間だ。彼等は、盗賊のような手段でそれを片付けようとしている。ルーディ・ジュリアーニ(前NY市長)でさえ、彼の会社を救済措置の「コンサルタント」として(給料を付けて)使うよう圧力をかけている。

 問題は、誰一人としてこの「崩壊」が一体何なのか分かっていない事だ。ポールソン財務長官でさえ、どの程度の救済金が必要かわからないと認めている。(7千億ドルという金額は、ただの思いつきらしい!)連邦議会予算局長は、彼自身この混乱を理解出来ていないし、人に説明することも出来ないそうだ。

 にもかかわらず、彼等は終末が近いと騒いでいる。パニック!不況!大恐慌!Y2K!鳥インフルエンザ!殺人蜂!即刻救済法案を通さなければ!空が落ちてくる! この世の終わりだ!

 何が終わるんだ?ガソリンの高騰、家を失う不安、健康保険のない不安、金融救済で終わる物なんて、何一つ無い。

 健康保険なんてウォールストリートの崩壊に関係ないだろって?それが、大ありさ。巷で「崩壊」と言われているものは、 不動産ローンの大々的な債務不履行と住宅の差押さえがきっかけになった。なぜそれ程多くのアメリカ人が家を失っているか知っているかい?共和党の連中に言わせると、それはあまりにも多くの返済能力の無い労働階級の馬鹿どもにローンが与えられたからだ。真実は、こうだ。自己破産の理由第一位、医療費。単刀直入に言おう。もしも、全国共通の健康保険があったなら、この「危機」は起きなかったかもしれない。

 金融救済法案の目的は、この8年間に蓄積された猥雑な程の富を守る事だ。それは、米国企業を所有、経営する株主達のトップを守る事。彼等のヨットやらマンションやらの「ライフスタイル」を維持する事。残りのアメリカ人が帳尻を合わせるのに苦しみもがく、それを尻目に。たまには金持ちに苦しんでもらおう。彼等に救済金を払わせればいい。毎日4億ドルがイラク戦争につぎ込まれている。即刻戦争を終わらせ、次の5千億ドルは私達のためにとっておこう!

 私はこれを書くのを止め、君等はこれを読むのを止めなきゃいけない。彼等は、金融クーデーターを起こそうとしている。議会が立ち止まって考え直すことなく急進する事を望んでいる。私達が、私達自身の手で彼等を止める機会を得る、その前に。だから、これを読むのを止めて、何かしなきゃダメだ。今すぐ!今すぐ出来ることは、こんなにもある。

1)オバマ上院議員に電話・メールする。
 ブッシュとチェイニーを、彼等の作った混乱を放っておく必要はないと伝えなさい。この騒ぎを沈め、最善策を見つける力が彼にはあると、私達は分かっていると伝えなさい。いかなる救済措置についても、金持ちが出す物を出すべきだと伝えなさい。選挙前の有権者の力を使って、住宅の差押えの凍結、全国共通健康保険の整備を要求し、私達の生活に影響する経済的決断の主導権を握るのは、私達であってウォールストリートの実力者ではないと伝えなさい。

2)抗議運動に参加する。
 全国で、数百のデモが急速展開されている。特にウォールストリート、ワシントンDC付近のものへの参加が望まれる。

3)自分の上院・下院議員に電話する。
 彼等に、オバマ議員に伝えた事を伝えなさい。

 人生において、大ドジをやらかせば、後始末は地獄の試練になる。これを読んでいる誰もが、この基本的教訓を知っているし、自分のした事の責任を問われたことがあるだろう。この偉大な民主主義の中にあって、大多数の勤労な国民とエリート連中で、適応されるルールが違うなんてことを許せはしない。エリート連中だけは、大ドジをしたのにプレゼントをもらえるなんて。冗談じゃない!

マイケル・ムーア

追伸1 救済法案の詳細を読み進めてみたが、君等がウソをつかれている事を知って欲しい。この法案は特別退職報酬を認めないとしている一方、会社役員の給料については一言も書かれていない。カルフォルニア州下院議員ブラッド・シャーマンの言うところでは、彼等は、この制度下で百万単位の月給をもらい続ける事が出来るそうだ。この制度で動くお金は、アメリカ市民が直接関われるものじゃない。外国の銀行や投資家も救済対象で、億単位の施しが受けられる。7千億ドルの多くが中国と中東の銀行へ直接引き渡される。このお金に、お目にかかる機会なんて二度とないかもしれない。

追伸2 ワシントンDCの知り合いと話してみたが、多くの民主党議員がこの法案を支持しているのは、週末の間にウォールストリートの連中が、年金基金と中産階級選挙民の401(k)を盾にとって、7千億ドルよこせと脅されたかららしい。民主党は、これはただの脅しじゃないかも、と逃げ腰になっている。だが今は、この8年間目にして来た典型的な民主党的対応で後退している時じゃない。民主党は、でっち上げ選挙に目をつぶりブッシュに政権をくれてやった。民主党は、イラク侵略に必要だった票もブッシュにくれてやった。2007年に議会を取り戻しても、戦争を止める事を拒否した。そして今、彼等は逃げ腰になって、世紀の大犯罪の共犯者に成り下がろうとしている。彼等に、今すぐ電話して「NO」と言ってやらなきゃいけない。もし、この法案が通ってしまったら、オバマ大統領が誕生した時、現状の改善がどれだけ困難になるか想像してくれ。彼等民主党議員に力を与えるのは私達だ。今すぐ彼等に電話をしよう。

(翻訳:なまくる・宇野真介)
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