夢の力 未来に向かう時間軸

子どもと大人の<あいだ> 青木信人より

子どもに一番必要なものは何か。
それは夢なのだと思う。
それよりもまず愛情だという意見もあるだろうが、
私はそう思わない。

身近な大人から愛されずに育った子どもが、
どれほど大きなハンディを背負うことになるか、
知らないわけではない。
保護監察官として出会った子の多くは、
そんな不幸な境遇で育っていた。

人が心健やかに育つためには、愛情は不可欠だろう。
しかし、愛情の厄介なところは、
望んだからといって、必ずしも手に入るものではないという点だ。

愛情は、相手次第で変わる、ある意味で不確かなものだが、
夢は、自分の気持ち次第でいくらでも持つことができる。
たとえ不幸にして親の愛情に恵まれなかった子でも、
夢を持つことができるならば、
そうした過去のさまざまなハンディを乗り越える力を
得ることができる。(中略)

夢の形はまちまちでも、夢を抱くことで、
見違えるように立ち直っていく姿には共通するものがある。
不遇な境遇を呪ってすねている間は、後ろ向きに過去しか見てないが、
夢を持つことで、気持ちの時間軸は、いっきに未来へと向かい始める。

恵まれた家庭に育った子に比べれば、夢のサイズは小さいかもしれない。
学歴がないために、選べる職種も限定され、
そのぶん夢はささやかなものとならざるを得ないことも多い。
それでも夢を確かにつかんだ子は、
夢を見いせないまま街をさまよう子にはない力強さを手に入れる。

夢には、不幸を幸福に帰る不思議な力が潜んでいる。
夢のない人生では、人は前向きには生きられない。
だから、どんな子にも、夢はなくてはならない。

<ガマは池や沼などでよく見かけます>