大佛次郎論壇賞を受賞して 湯浅 誠(反貧困ネットワーク事務局長)

政治の監視、市民の責任より

日本経済にとって今回の米国発不況は「天災」
のように言われることがある
しかしアメリカン・スタンダードをグローバル・スタンダードと
言い換えて新自由主義的資本主義に無批判に追随してきた
経営者団体、規制改革会議・経済財政諮問会議等の
責任は大きく、その意味では「人災」である

にもかかわらず反省の弁は聞こえてこない
結局、自己責任論とは自己責任を棚上げする人たちが
主張していたものなのだ
私たちがそんな下劣なものに引きずられる必要はない

私たちの取るべき責任は他にある
それは市民生活が健全に保たれるように政府・企業を監視し
法を守らせ一人ひとりの命と暮らしを守る政治を
行わせるという責任である

「お金がないから仕方ない、不況だから仕方ない」と言って
結果的に弱者のいのちを削ることになる政策を
採用しようとする政治家はいくらでもいる
しかしそのとき、医者は「この患者を見殺しにしろと言うのか」と
介護ヘルパーは「この寝たきりのお年寄りを放置しろと言うのか」と
労働者は「今日まで一緒に働いてきたこの仲間を路上に放り出せと言うのか」と
異議申し立てしなければならない。それが市民としての責任だ

私たちの毎日は「この人、あの人」と名指せるような
家族・友人・同僚らとの身近な関係の中にあり
その1人が苦しんでいれば心ざわつき、死ねば悲しい
それが私たち市民の日常であり、その平凡な生活を守るのが
政治の役割に他ならない

〜中略〜
結局私たちはナメられてきたのだと思う
自らの責任を棚上げしたところでの自己責任論や
情報公開なき財政危機論で黙らせられると見くびられてきた
私たちに責任があるとしたらそこにこそ責任がある
私たちはどんな悪政にも黙って付き従う羊の群れではないと
示さなければならない

・・・・・・今年私たちを襲ったのは台風でも地震でも津波でもなく
政治という人災だったことを確認して事務所の仕事納めとします・・・・・・

<ハボタンといえばお正月です>