児童ポルノ 日本は単純所持禁止を

トーマス・シーファーさん 駐日米大使

 今の季節、世界各地で子どもの無邪気に喜ぶ姿を
見ることができる。
米国ではサンタクロースにプレゼントをお願いする時、
日本ではお年玉をもらう時だろうか。
私たち大人にとっても特別な季節だろう。

 しかし、マリとジュン(ともに仮名)は、
子どもらしい無邪気さをとうの昔に失ってしまった。
欲望と異常な性壁に満ちた大人が彼らを性的に虐待し、
児童ポルノを作るために利用したからだ。

 ロサンゼルスのある米連邦捜査局(FBI)捜査官は、
マリとジュンの画像を児童ポルノ捜査中に見つけた。
12歳に満たないマリは、日本人の成人男性にレイプされているところを
ビデオに撮られた。10歳にもならないジュンは、
やはり日本人男性にオーラルセックスされるところを撮られた。

 インターネットの普及により、世界各地で閲覧できる児童ポルノは
数十億ドル規模のビジネスになった。影響も出ている。
心理学者が米連邦刑務所に提出した報告書によると、
児童ポルノ犯の85%が子どもへの性的虐待を認めた。
世界に児童ポルノが蔓延している今、私たちは行動を起こさなければいけない。

 日米欧の主要7カ国(G7)のうち、
米国、英国、フランス、ドイツ、カナダ、イタリアでは、
児童ポルノの単純所持を処罰する法律がある。
単純所持を罰せられないのは日本だけだ。
日本が同様の法を制定すれば、無実の人が起訴される恐れがあると
批判するひともいる。
 では、犯罪の犠牲となり、無邪気さを奪われたマリをジュンは、どうなるのか。
彼らは生涯、ポルノ被害の残像に苦しめられるだろう。
友人がネットを利用している時に、おぞましい秘密を知られないか思い悩むだろう。
成長し親となっても、家族に過去の映像を見られることを心配し続けるだろう。
誰が自分の子どもにそんな運命を背負わせたいと思うだろうか。

 G7の6カ国が、単純所持で無実の人間が起訴されないよう対策をとった。
日本も児童ポルノ犯を罰する時ではないか。

 この問題は日本に限ったことではない。
だが、日本は児童ポルノの製作、供給、消費の主要な拠点となっている。
児童ポルノ根絶のため、私たちは団結すべきだ。
現在、日本の警察は児童ポルノの没収はおろか、需要を生み出す者を逮捕・起訴することもできない。
撲滅のための手段(法律)が必要だ。

 今年も、子どもたちが喜ぶのを目にする季節が来た。
どうか、新年の抱負で願って欲しい。
「マリとジュンの苦しみを二度と子どもたちに味わわせないよう、可能な限りのことをしていきます」と。
日本と各国の政府に、児童ポルノ撲滅への闘いに参加するよう促して欲しい。
そうすれば、マリとジュンは、新年にいくらかの希望と喜びを
見出すことができるかもしれない。

<千両は冬の生け花や寄せ植えによく使われます>