「環境教育推進法」の改正に向けた要望書

「環境の保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」
の改正に向けた要望書

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08年11月18日
共同代表:加藤三郎
共同代表:藤村コノヱ

 2003年7月に成立した「環境の保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」(以下、環境教育推進法)が改正時期を迎えます。この法律は、地球温暖化はじめ様々な環境問題が深刻化する中、持続可能な社会の構築をめざして、環境教育並びに環境保全活動を促進させることを目的としたものです。しかし、法施行から5年が経過した現在、国民の環境意識は以前に比べて高まってきたものの、多くの場合意識が具体的な行動に結びつくには至っておらず、その結果地球温暖化がますます深刻化するなど、法律が目指す持続可能な社会とは程遠い状況にあります。
 
 こうした状況に鑑み、この法律の制定に深くかかわり、また持続可能な社会構築に向け日々活動を展開している私たちNPO法人環境文明21は、法律の改正にあたり次の5点を強く要望します。

1.独立した教科としての環境科(仮称)の新設

 地球温暖化をはじめとした環境問題は21世紀の人間社会にとっての最重要課題であり、異常気象、食糧・水・エネルギーの枯渇など激変する地球環境に対応できる「生きる力」を育むことは、教育の中で最も重要なことです。しかし現状では、教職員の指導力の不足、時間確保の困難さなどから十分な教育が行われていません。総合的学習の時間や生活科の時間数削減などの影響も懸念されます。
 
 そこで私たちは、環境科の新設を強く要望します。

 環境科の新設により、これまで単発的に行われていた環境教育が児童生徒の発達段階に応じて継続的・統合的に行われることになり、全ての子供に平等に学習機会が提供されます。また、予算措置がとられ、それによって専門教員の確保、カリキュラムの作成、教材の開発整備、教員の研修などが進むことになります。

2.環境教育の定義の拡大 

 環境教育は持続可能な社会構築に向けて行われるすべての教育・学習活動です。しかし、現行法では「環境の保全についての理解を深めるために行われる環境の保全に関する教育および学習」となっており、現在の環境問題の時間的空間的な広がりや、持続可能な社会構築に向けて行われている多様な環境教育・学習活動をカバーしていません。今私たちに求められるのは、国内外の持続性確保のための教育・学習です。

 そこで私たちは、「環境教育」を「持続可能な社会のための教育」と新たに定義することを強く要望します。

3.環境保全活動の定義の拡大

 環境教育や環境保全活動の目的は持続可能な社会の構築であり、そのために多面的で多様な活動が必要です。しかし、現行法第二条で定義された「環境保全活動」は範囲が限定的で環境の保全上直接の効果を有するものとなっています。

 そこで私たちは、「環境保全活動」を「持続可能な社会づくりのための活動」と新たに定義し、中長期的にも持続可能な社会づくりに役立つ幅広い活動とすることを強く要望します。

4.環境保全活動を促進させる仕組みの導入

 現行法では第十九条で土地の供与等の措置がありますが、、実行上の措置がないため実態はほとんど進んでいません。また環境保全活動は自然保護活動から地球規模の活動まで広範で、その手法も実践型から政策提言活動まで多様なことから、現行法では到底全ての活動を促進することはできません。

 そこで私たちは、環境教育で学んだことを社会で活かすために政策形成・実施過程への市民・NPOの参加を制度的に保障するしくみの創設、環境保全活動を財政的に支援するための助成金の拡大、経済的基盤強化のための税の優遇措置の拡大など、環境保全活動を促進し活動の持続性を担保する仕組みの導入を強く要望します。

5.名称の変更

 私たちが望む最終目的は持続可能な社会であり、その有効な手段として環境教育と環境保全活動の双方を一貫して推進する法律であることを明確にする必要があります。

 そこで私たちは、現在の名称から「持続可能な社会のための環境教育および環境保全活動の推進に関する法律」と改称することを強く要望します。


【ダウンロード】
 ・ 「環境教育推進法」の改正に向けた要望書(PDF / 103KB)
 ・ 「環境教育推進法」の改正に向けた要望書(Word / 38KB)

【関連リンク】
 ・ 環境教育推進法の基本方針案に対する意見書(平成16年度[2004年度] )
 ・ 環境教育推進法に関する環境文明21のこれまでの活動
 (平成15年度[2003年度] )