差別を“肥やし”に世界で歌う 藤村 実穂子より

現代最高のメゾソプラノとして欧米で活躍中(ドイツ在住)
東京芸大大学院を修了し、故ハンス・ホッターのもとで
大好きなドイツリートを学ぶためミュンヘンに1992年留学
1995年グラーツ歌劇場(オーストリア)の専属歌手になった
その後は本当に人種差別との戦いだった

オペラハウスまでの1日2回往復の電車で
私のことをまるでごみであるかのように見る人は1人や2人ではない
クリーニング、靴の修理、あらゆるところで料金は2倍3倍にふっかけられ
お釣りも少なく返ってくる

スーパーでは会計の女性がレジを待っている私を見ながら
知り合いと20分もしゃべり結局ふてくされてレジを打ち
お金を払うとおつりを床に投げつけた
まるで貧者に恵むお金のように
私は黙って床にひざまづいておつりを拾い集めた

こんな経験を1日に何度も繰り返す日々が毎日続くと
いつか自然に自分に問いただす
「『ヨーロッパ文化の粋』といわれるオペラをアジア人の私が
何故こんな思いをしてまで歌わなければならないのか
いったい自分は何のために生まれてきたのか」と

問い続けているといつかこんな答えが出た
神様はきっと私に学ばせたかったのだ
差別されることによって人の傷みというものを知り
日本に住んでいれば分からなかったであろう広い世界を見
今まで知らなかった文化の人と知り合い一緒に働くことによって
物事を違う面から見ることができるよう学びなさい

理論でなく脳みそでなく紙の上の論でなく
体を持って経験しなければ魂の学びではないと
そう思うと私は幸せ者だ
何があっても『これも学び』と思えば感情的にならずに
ふっと我に返ることができる

・・・・・確かに狭い島国日本にいれば実感が持てない人種差別・・・・・

<紅梅がきれいです>