ネットいじめ ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」
荻上チキ PHP新書より
事実、メディアで「学校裏サイト」が取り上げられる際は
具体的なアドバイスがなく、
「大人」目線から子どもをモンスター化して描き出すことで、
子どもからインターネットを取り上げようという語りのものや、
問題を列挙するだけで、「もっと対策を考えるべきだ」
「もっと親の意識が重要だ」とお決まりの言葉で締めるものが
圧倒的に多い。
卒業前にみんなで仲良くなろうと「モバゲータウン」内でサークルをつくり、
もうじき1年間になるC(高3、男子)は、報道について次のように語った。
—これまで、いじめとか悪口とかって書かれたことある?
「いじめとかは、自分のサークルでは特にないよ。
これまで嫌な思いもしたことはないかな」
—平和な感じ?
「うん。モバは優良ユーザーのほうが多いと思うし。
でも、一部の大人を制限しなきゃいけないのが問題だよね。
殺人事件も起きたし」
—メディアは子どもがケータイをもったせいにしてるけど、どう?
「そうじゃないことを証明するためには、ちゃんと使っていることを
見せる必要があると思う。といっても、できることは雑談だけなんだけど…」
—(笑)。日常的な書き込みは、メディアでは取り上げられないもんね。
「うん。事件ばかり取り上げられる。
—今回のモバゲーの規制についてはどう思う?
「規制は必要。一つの命が失われたのは確かだから、対策はしなきゃ。
マナーがダメならルール、ルールがダメなら規制が必要になるのは当たり前。
法律と同じだよ。でも、残念だと思う」
Cがここで語るように、日常的に利用されているようなケースは
ニュース性がなく、淡々と雑談していることが「成功事例」として
メディアを通じて知らされることはほとんどない。
メディアで取り上げられているのは、いじめにかかわる例、
誹謗中傷がかかわる例、そのほか犯罪などに関わるような例が中心であり、
日常に溶け込んだツールとして用いている世代のもつリアリティは
いっさい伝わらない。
文部科学省の調査では、学校勝手サイトのなかの半数に
中傷の書き込みが確認できたという。
重要なのは、書き込みの半数が中傷、というわけではないということだ。
中傷が書き込まれているサイトでも、その書き込みを除けば
有意義に使われているケースも多く、
「誹謗中傷が書き込まれている=問題のあるサイト」というわけではない。
学校裏サイトには独自の子ども文化があり、
多くの管理人はそのムードに注意しながら運営を行っているため、
十把一絡げに「学校裏サイトはこういうものだ」
という議論をすること自体が、「実態の把握」とは程遠い作業になってしまう。
<茶の花は椿に似ています>