2009年春号(Vol.54)の紹介 ⑥ 街の芸術家

老人ホームに暮す山野正徳さん(1916年生れ)にもお会いしました。

山野さんは、「街の芸術家」とでも呼びたいような方。
ホームでは、コンサートのたびに、ドイツ語やロシア語で、
歌曲や民謡、オペラを朗々と歌うテナー歌手。

ドイツ語は姫路高等学校で習い、
ロシア語やロシア民謡は、
兵隊として満州にいたとき、
共産主義革命から満州に亡命していた
ロシア貴族の末裔に習ったというから驚きです。

神戸市交通局に勤めながら、
好きで描きためた水彩画も、
飄々としたタッチが大好きです。
(右の絵は三宮にあったパブ「キングス・アームス」)

大腿骨を骨折してからは遠出を禁止され、
宝塚の施設に入っている認知症の奥さんを
見舞えなくなりました。
塩屋の海岸をステッキ片手に散歩し、
美味しいものを食べに、レストランを探して、
出かけるのが楽しみだそうです。

「今でも“I love you”って生きたいんだけど
相手がいないんだね」と大笑いされていました。

「“I love you”と生きる」
何て、素晴らしい言葉でしょう。

(右の山野さんの絵は
にっちに青蛙居士通信を連載くださっている、
橋本武氏のページに使わせていただきました)