よい依存と悪い依存

渡辺登(日本大学医学部精神医学分野教授)

依存とは人間が生まれつき持っている、
こころの安心や肉体の満足を求める行為です。
私たちは他人や組織との関係に依存しなくては
生き延びられません。
周囲の人びとと支えあいながらも、
自分の言動を他人や組織に束縛されず、
主体的に決められることが自立です。
支えあう依存を、私は「よい依存」と呼んでいます。

一方、家族や友人から安心や満足を得られないと、
しがみつくような依存を起こしがちです。
この依存では、相手の立場を考えません。
安心や満足を得るために、そろばんをはじいて相手と付き合います。
なによりも自分の利益が優先です。
相手を思いやる素振りを示しながら、見返りを期待しています。
身勝手な依存を「悪い依存」と名付けました。

他人を思うように動かして安心や満足を求めようとしても、
その願いが満たされないこともあります。
そこで身近な行為に頼って、不安感を消し去ろうと試みます。
ギャンブルや買い物、仕事、性的逸脱行為(たとえば痴漢、のぞき)、
盗みなどです。

あるいは酒やたばこ、大量の食料、違法薬物などを体内にとりこめば、
快楽を手軽に得られます。
安心感の乏しい人は、それらを体内にとり入れた時の快感が
忘れられず、行為を続けます。
ギャンブルや飲酒などに病みつきとなる自分本位の行為も、
悪い依存です。

安心や満足を手に入れようと始めたのに、
どれほど努力しても自分の意思では悪い依存を
コントロールできなくなる場合があります。
悪い依存をやめなくてはならないと自覚しても、
やめられなければ、「依存症」という病気になっているといえます。

<カニバサボテンがきれいです>