世界に誇る蒲田の町工場を支える武蔵新田「森の湯」、同潤会調布千鳥町住宅

銭湯のあるまち、今回下車した東急目蒲線(多摩川線)武蔵新田駅は、東京の南の方、大田区にあります。高い技術を誇る蒲田の町工場群からも近く、ちょっと古風なお店が多い駅前商店街が賑わっています。森の湯は駅のすぐそば、新しいお店にはさまれて、奥まった玄関は新しくなっていますが、建物自体は堂々とした和風の銭湯です。

しかし、浴室に入ると、壁の絵はユニーク、欧米かどこかの湖畔のリゾート地で、手前にはナイアガラのような瀑布、女湯にはお城も描かれているようです。照明も凝っていて、ガス灯を思わせる洋風の電灯です。洗い場は少し狭いので横方向にも仕切りがあり、その上にも街灯のように立っています。

感心してあがった時には、日暮れてまちの灯りが点るころ、来た時には気づかなかった玄関脇の灯りが、なんとも言えない暖かい雰囲気を出していました。

森の湯 大田区矢口1-16-22 15:30−23:00 火曜お休み 東急多摩川線武蔵新田駅すぐ

この近く、目蒲線と、同じ蒲田をターミナルとする東急池上線にはさまれた千鳥町には、工場などへ通う方の住宅が戦前からたくさん建てられていました。池上線に近い方にも銭湯がありましたが、残念ながら休業されているようで、森の湯がこのあたりの最寄りの銭湯だと思います。

目蒲線と池上線の間の住宅地を歩いていると、中央に緑地帯がある一風変わった道路が目をひきます。周囲は整然と区画された住宅地で、住民の方が前の植え込みで様々な花や木を育てていらっしゃる姿を見かけます。

千鳥町には戦前、同潤会が職工向けに分譲した調布千鳥町住宅がありました。昭和14年、15年の竣工ですから、同潤会住宅の中でも、もっとも遅い時期になります。衛生的、文化的な都市生活を提供する理念で始まった同潤会住宅も、日中戦争が始まり、軍需工場増産の職工確保という国策のための住宅供給に方向を転じていきました。