ホームレス人生相談

66年に創刊された週刊プレイボーイの売り物は、
作家柴田錬三郎の人生相談だった。
受験に失敗し、自殺したいという18歳をシバレンは一喝する。
「生き残っても日本のために役に立たん…
こう云われて、くやしかったら生きてみろ!」

人生を極めた先生が針路を示す。
この常道を外れた、しかし思いの深さでは負けない相談に出会った。
野宿生活者が答える「ホームレス人生相談」である。
彼らが大都市の路上で売る雑誌「ビックイシュー」の人気コーナーだ。

例えば実母を持て余す女性に、家族を捨てた男性が
「愛すべき人がそばにいる。それだけで幸せなこと」と諭す。
問答をまとめた単行本『世界一あたたかい人生相談』も出た。
どん底を経験して初めて見えるものもある。

街角の雑誌売りに、悩みを明かす若者が多いことから
生まれた企画という。
1冊300円の雑誌は売り子に160円をもたらす。
03年の創刊以来、800人強が計4億円近い現金を得て、
81人が職に就くまでになった。

出版元の佐野章二さん(67)は
「売ってくれるからビジネスになる。彼らは施しの相手ではなく、
私たちのパートナーなんです」と語る。
「売る勇気」から始まる自立。
英国生まれのこの仕掛けは、貧困への関心も高める。

強者不在の相談と上を向く野宿者。
月2回刊の雑誌は、今では得がたい温もりと望みを届ける。
迷える世にほしいのは、あとは激しさだ。
時代ゆえにせよ、剣豪作家が悩みを斬りまくった相談は、
熱く激しく「キミはやれ、俺がやらせる」のタイトルだった。

<ヤマブキがきれいに咲いています>