神保町梅の湯と九段下ビル、震災復興助成会社が唯一つ実現させた関東大震災の商業復興建物

神田神保町は古本で有名、古書街に似合う古い商店や喫茶店があり、とても楽しい街です。そこに梅の湯はあるのですが、本を買いに行って銭湯によるというのはあまりしっくりこないですね。梅の湯には、シューズは外で脱いでくださいと書かれたお願いが目につきます。梅の湯をよく利用されるのは、文学青年ではなく、スポーツ系の方のようです。

ほかにもう一か所、半蔵門の銭湯も有名ですが、梅の湯は、皇居の北端にあたる九段から近く、皇居のお堀をまわるマラソンの後で汗を流すのに便利な場所。ビルの1階にあり、近代的で清潔ですが、何といっても都会の真ん中、脱衣場、浴室ともそれほど広くはありません。何とか工夫してカランの数を確保しているという感じです。脱衣場、洗い場はぜひ譲り合って使いましょう。

梅の湯 千代田区神田神保町2−8−2 15:00〜25:00(祝日は23時まで)定休日 日曜
地下鉄神保町駅からすぐ

梅の湯から出て、九段の方向に歩いて行くと、右手に古びた3階建てのビルがあります。入居している商店も残り少なくなり、建物自体もかなり傷んできているようで、タイルの落下に備えて、危険防止ネットが大部分に張られています。

入口に「九段下ビル」と表示されているこのビルは、関東大震災後に震災復興助成会社が建てたものです。関東大震災後の住宅復興は同潤会が中心になりましたが、同様に商業の復興に取り組んだのが、震災復興助成会社でした。商店の再建は、建物をつくるだけでなく、お客も呼び寄せなければならず、阪神・淡路大震災の経験からも、難しい課題だと思います。残念ながら九段下ビル(今川小路共同建物)以外には、震災助成会社が実現させたものはなかったようです。

 結局関東大震災の商業復興に成果をあげたということはできないかもしれませんが、その難問に取り組んだ人たちがいたことを、九段下ビルは現在まで伝えています。