「緊張で指が震えた、初めてのビッグイシュー」

いつものカフェでふと窓の外を見ると、
ビッグイシューを掲げた販売者さんが
立っていました。テレビを見て存在は知っていましたが、
販売者さんのもとへ行って買うことには、ためらいを感じました。

そこで、どれくらいの人が買っていくのか
様子を見ることにしました。たくさんの人が買っていれば、
私も混ざって・・・・という魂胆でしたが、
約1時間誰ひとり足を止めることはなかったのです。
それどころか、急ぎ足で次々と通り過ぎる人たちに、
何か冷たい空気を感じました。

あきらめムードの私でしたが、フッと考えがよぎりました。
「頭の中でいろいろ考えるより、
いっそ行動すればいいんじゃないか?」と。
私は読んでいた本をカバンにしまい、カフェをでました。

一直線に販売者さんのもとへ行き、「1冊ください」と言いました。
あらかじめ財布に入っているのを確認しておいた100円玉を
3枚取り出す時、私は驚きました。
自分の指が緊張で震えていたのです。そんな私に販売者さんは
優しく「最新号でいいですか?」と尋ねました。

私が「ありがとう」とお金を払うと、販売者さんは笑顔で
ゆっくりと「ありがとうございました」と言いながら、
深く深くお辞儀をされたのです。
直前に会ったレジの女性が、能面のような顔で
「ありがとうございました〜」と決められた言葉を
ただ繰り返していた姿が思い浮かびました。

私は今まで生きてきたなかで、一番心のこもった
「ありがとう」をもらった気がして、胸がいっぱいになりました。

雑誌を1冊買うという小さな行動ですが、
カフェでためらいを感じていた私と買った後の私では、
確実に世界が広がったように思います。
本当にあの時勇気を出して買ってよかったです。

<キンギョソウがきれいに咲いています>