「GOTEN GOTEN アート湯治祭」としての試行錯誤のファーストステージから、次の千年へとつづくセカンドステージとしての「千年湯治」へ。
宮城県北部の伝統ある湯治場・東鳴子での取り組みに参加して、今年で5年目になります。今年は使われていない旅館別館を使って「こども旅館」なる企画を提案していましたが、何とか助成金のめどもつきました。
以下、概要です。
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鳴子御殿湯こども旅館(すべて予定)
子どもたちは親と別れ、湯治場の旅館主人らにみっちりと礼儀作法を仕込まれます。それから部屋のそうじや風呂のそうじ、ふとんの上下し、お湯や湯治場の歴史について学びます。東鳴子には様々なお湯があるので、「お湯」と一口にはいえないことが肌でわかります。修行の最後は、お客さん役の親や地元住民エキストラを迎えた接客。最後に、子どもたちと親、地元住民がいっしょになって、老舗旅館「勘七湯」別館ほぼ全域を使った「ありえない旅館」づくりを行います。「信じられないほど長いピタゴラ装置」や梱包材をもちいた「泡風呂」、「オトナの部屋」「ヒミツの間」など、妄想的な創意工夫で現代の桃源郷的パラダイス秘密基地がつくられていきます。
スケジュール:
・地元の子どもたちを中心に「こども旅館」づくり…7月下旬〜8月末
・一般からも募集して行う「湯治場修行」+「こども旅館」づくり…8月17日14:00〜16:00
「勘七湯」別館は、07、08年に行われた「GOTEN GOTEN アート湯治祭」の折、「展示場所として使わせてほしい」というアーティストの熱い思いに主人が心を動かし、長らく使われずにいたものをアートの展示場所として開放されました。今年2010年、新たに「千年湯治」と改められた企画名のもと、今度は「湯治文化を遊ぶ場所」へとさらにレベルアップして使用されます。
この別館には大小さまざまな部屋があり、当時の趣を今に伝えます。例えば「新婚の間」。あるいは湯治の期間を嫁姑がずらして湯治場に訪れ、普段とはちがう広々とした館で湯に浸かり、リラックスすることで心身の健康を保っていたという歴史。また「入れ込み」といって全く知らない人どうしが同じ部屋に宿泊し、それを当然のように受け入れるホスピタリティ。
そうした独特の歴史、文化、風習といったものを記憶するまさにその建築物の内部で、こどもたちそしてその親の世代と過ごし、伝え、何かを感じ取ってもらうことは、湯治文化を見直し、ある意味継承していくことになると考えています。特にこの場合の継承が、単なる保存とは異なるものであることが重要だと思われます。そのために必要な視点が「アート」であると考えます。
「こども旅館」ではまず子どもたちは親と別れ、東鳴子の旅館主人らにみっちりと礼儀作法を仕込まれます。部屋のそうじや風呂のそうじ、ふとんの上げ下ろしなどを体験します。また、お湯についても体験的に学びます。東鳴子にはさまざまなお湯があるので、「お湯」と一口にはいえないことが肌でわかります。こうしてさまざまな湯治場を体験した後は、親や地元住民エキストラがお客になり、こどもたちのもてなしを体験します。ここで親たち、あるいは地元住民は子どもの目を通した湯治場を発見することでしょう。最後に、「修行」の終わった子どもたちと親、地元住民とがいっしょになって、別館のほとんどを使った「ありえない旅館」づくりを行います。そこでは「信じられないほど長いピタゴラ装置」や「ヒミツの間」、梱包材などをもちいた「泡風呂」などを中心に、参加者の創意工夫でカオス的な「ハレ」の場が表現されていきます。
以上のような「修行」と「カオス」の両面を体験する一日を送ることで、東鳴子という場が参加者にとって特別な「忘れられない場所」になり、また受け入れる地元住民にとっては新たな湯治場の顔を発見する場となる企画、これが「こども旅館」です。
また「旅館」はつくられるだけでなく、運営されていきます。一度この場所の楽しみを知った人々は、地元住民を中心に、何度となく通ってくるかもしれません。そうした人たちがいつしか繰り広げていく「空想の場」は、自然発生的に独自の規範をつくりながら展開、増殖していくのではないかと期待しています。
(門脇篤)