公共福祉という試み−福祉国家から福祉社会へ

 理事の伊藤が「NPO公共哲学研究会」を通じて親交のある稲垣和久さんの新著である。鳩山政権が「新しい公共」を提唱したことから、改めて「新しい公共」が注目されているが、しかし論者によって相当に考え方が異なっているのが現実である。
 本書は、公共哲学の立場から「福祉政策」の考え方に重要な一石を投じるものである。副題の「福祉国家から福祉社会へ」というのは、いかにも刺激的である。福祉における「ナショナル・ミニマム」論を考える上でも、本書は避けて通れないのではなかろうか。国家政策による「制度」が、制度疲労を起こし、使い勝手が非常に悪くなっている今日、それではどうすべきなのか、本書は示唆に富んでいる。
 これまで福祉に携わってきた人も、こなかった人のも、ぜひ一読玩味していただきたいものである。

「帯」には、「今、注目される『新しい公共』と題して、次のように述べられている。
「公助・自助・共助」の次にくる「公共福祉」
「公共福祉」は市民がリードし、行政がこれを補完する
「私たちの福祉」です。本書では公共福祉という視点から、市民主権の福祉社会創設を提案します。

出版:中央法規出版 本体2800円
著者:稲垣和久(東京基督大学教授)

<目次>
はじめに
序 章 公共福祉という試み
第1章 福祉について考える
第2章 ケアについて考える
第3章 公共について考える
第4章 国家について考える
終 章 公共福祉へ