後期高齢者医療制度を廃止した後の制度について、その骨格案が7月18日のマスコミ各紙で報道されている。厚生労働省は23日にも中間報告案を公表する。骨格案の柱は、国民健康保険(国保)であり、あらためて国保が注目されている。その国保について、わかりやすく課題を解説したブックレットが出版された。
国民健康保険 岩波ブックレット(結城康博:著)
国民健康保険は、「国民皆保険」の制度的基礎である。国民皆保険は、生活保護の受給者などの一部を除く日本国内に住所を有する全国民、および1年以上の在留資格がある外国人は何らかの形で健康保険に加入するように定められていることをいう。この「国民皆保険」制度によって、日本に住所を有する人々は、何らかの医療保険に加入し、医療サービスを平等に享受できることになっている。これは1961年頃から制度的に確立し、世界的にも優れたシステムとして評価されているものだ。
国民健康保険制度は、その「国民皆保険」の基礎的なシステムである。勤め人以外は(自営業の人や農林水産業の人、無職の人など)、市町村が運営する(市町村が保険者)国民健康保険に加入し、医療サービスを受けることになる。
しかし今、国民健康保険制度に制度的なほころびが目立ち始めたという。本書は、日本の医療システムを維持していくためには、国民健康保険制度を安定的に維持していくことが最重要課題だという問題意識のもとに書かれたものである。
最大の課題は「財政」である。つまり国民健康保険問題とは、市町村財政問題でもある。医療制度に関心のある方だけでなく、市町村財政に関心のある方にもぜひ読んで頂きたいと思う。ブックレットなので、62ページにまとめており、大変読みやすい。(伊藤)
岩波ブックレット 定価500円(+税) 著者 結城康博
目次
はじめに
第1章 保険証1枚で医療サービスが受けられる
第2章 保険料の高騰とその滞納問題
第3章 国民健康保険制度の役割変容
第4章 後期高齢者医療制度と市町村国保
第5章 国民皆保険を守れるか