藤乃湯と西郊ロッヂング

JR中央線、メトロ丸の内線の荻窪駅から北東へ、天沼の住宅地の中に藤の湯があります。玄関まわりは新しい建物のようですが、実は伝統的な和風建築。脱衣箱はフロントで鍵をもらう仕組み、荷物があると2倍縦長の脱衣箱を配慮していただきました。開けると、内部は上下二段で、もともと上下に並んだ二つの箱を1枚の扉にしたようです。
 浴室は湯気抜きがある伝統的な作りですが、何よりも浴槽の背景のモザイクタイルが素晴らしく、夕陽とシルエットの帆船が圧倒的な迫力です。備長炭の浴槽はぬるめですが、他の浴槽は、ジェットなどの勢いも強く、温度も高めで気持ちいいです。

藤乃湯 杉並区天沼2−17−20 16:00〜24:00 土曜お休み 中央線、メトロ荻窪駅から徒歩5分

藤の湯から南へ、ちょっと分かりにくい天沼の住宅地を抜けて、青梅街道が中央線を越える天沼陸橋を下ります。降り切ったすぐ近くの角に、西郊ロッヂングと右書で書かれた切り抜き文字の看板が輝いています。
建物のコーナーが丸くなっていていたり、屋根にドームが載っていたりと建物自体もなかなかのデザインです。旅館と賃貸アパートが隣り合っていますが、もとは高級下宿だったそうで、昭和6年に本館(今旅館になっている和風の方)が建てられたということ。

関東大震災後の東京西郊外への居住地の広がりの中で建てられたようです。近くの同潤会阿佐ヶ谷住宅・荻窪住宅が分譲されたのは昭和4年、井荻の土地区画整理事業も大正14年から昭和10年にかけて行われました。西郊ロッヂングの洋館が建てられたのは昭和12年ということです。