さくらびレポート214〜中学生が独自アートプロジェクトを企画・実践できるか?

櫻ヶ岡中学校の中平です。七瀬まるごと美術館から考察したいと思います。

とがびや、さくらびは、作品の一つ一つが、中学生独自の視点で考えた「アートを通したコミュニケーションの取り方」を目指した「アートプロジェクト」だと思います。

七瀬まるごと美術館は、生徒が学校の外に出て、地域住民と交渉し、住民の方の声を参考にして作品を作りました。ですので、言ってみればこの作品の一つ一つが立派な「地域と中学生のコミュニケーションによって成立するアートプロジェクト」であったと言えるでしょう。

プロジェクト開始時、私は美術部の生徒に「作品を学校で作ってポンと置いてくる展示は今まで出来てきた。これからは、地域の人をもっと作品に巻き込む方向を考えたらどうか」と提案しました。すると、生徒たちは、「住民の方に作品を手伝ってもらう」「住民の方を作品にする」「住民の方の好みを作品に生かす」という方向を発想し、実際にインタビュー活動をして作品を展示しました。

そうすると、中学生としては秀逸なプロジェクトによる作品、というか、ワークショップ的作品が登場したことに、私は驚きを隠せませんでした。

写真の作品は、ある住宅の花壇に展示させてもらっている準備の写真です。住民の方の好きな色や、物を事前に調査した上で、作品展示を住民の方にお手伝いしてもらっているのです。住民の方もいやな顔一つせず生徒の指示通りに作業をしてくださいました。

写真の靴屋さんも、生徒から「作品に好きなハートマークのシールを貼ってください」というお願いを聞き入れて、貼ってくださっています。

上の二つの活動は、生徒は作者というより、企画者であると思います。見る人を作品に取り入れるという発想は、作品作りだけでなく、他者の反応や説明のしかたまで事前に考えておかなければならないので、中学生にとっては抵抗があるだろうと思います。

しかし、そんな予想も完全に裏切られ、3つの作品がこのように住民参加、協働制作として機能しており、実際に行われたことに、衝撃を感じました。

実際、住民の方が、どれだけ協働することに喜びを感じていたかわかりません。しかし、中学生がアートを通して住民の方と「自分たちの企画を使って」コミュニケーションとった事実は、今後大きな可能性として、次のステップを示唆してくれていると思います。