さくらびレポート232〜3学年「卒業制作・夢」:使っている素材の使い方は・・・

櫻ヶ岡中学校の中平です。本校3年生は、今、美術の必修授業で「卒業制作:夢」を行っています。文化祭終了後始まった題材ですので、今ちょうど10時間経過したくらいです。

生徒は、美術室に休み時間から集まり、生徒の中には授業開始前から作業を始めるものがあり、意欲の高さを感じます。「自分で方向性や素材、表現したい主題を決めていい」ということが彼らの意欲を高めているのでしょうか。特に今年の3年生はとても意欲的です。

写真は、エグザイルのボーカル写真を、ペンのみ使い、トレーシングペーパーに点々だけで描いています。当初はサイズがもっと大型だったのですが、個別指導を通して、とれぺのサイズを縮小し、窓ガラスで描いていました。しかし、立った状態で描いていくと、ペンのインクが出にくくなることに気づき、もっと描きやすい方法を教師と生徒が考えた結果、プラスティックのバットに、スポットライトを入れて、塩ビ板を置いて描くことにしました。生徒のやってみたいことを、教師も一緒に考えた結果です。

実家が蕎麦屋を経営しているので、自分なりの蕎麦を作りたい。

ということで、ユニークな発想で蕎麦を作っています。針金で立ち上がった箸。その下にはおいしそうな蕎麦。お皿や入れ物など、本物そっくりとは言えませんが、やりたいことは十分伝わってきます。

この作品を作るために、生徒が使っている材料は、たくさんあります。

ベニヤ板、針金、割り箸、布、紙粘土、墨、ブロンズ粘土、スライム。

美術の授業で、3年間の中でどれだけの材料を扱ったでしょうか。色々な材料を自分で選択し、自分で構成するという授業はあまり多くなかったと思います。私が考案したNスパイラルは、最終的に卒業制作で、多様な材料の中から自分にあった素材を選んでいくことが出来る力を付けたい、という狙いで行っていますが、授業時数がすくなくなっている中、うまく機能していないように感じていました。この蕎麦つくりの生徒は、その点、多様性を発揮していますが、全ての生徒がこのようにはいっていないことも事実です。そこが課題です。

今までの授業で扱わなかった素材を、卒業制作の中で始めて使おうとした生徒を紹介します。

授業で扱ったことが経験になり、どこかでもう一度扱おうとすることが、生徒の素材を扱う多様性を豊かにする・・・。私はこう考えています。しかし、一つ抜け落ちていたことがわかりました。それは、「授業で扱わない素材には、生徒は興味を持たないだろう」という勝手な思い込みでした。つまり、授業で扱わなかった素材は、生徒は手を出そうとしないから、授業で教師が教えてあげないといけない、という思い込みです。

写真の生徒は、モデリングペーストを使って樹木のでこぼこした表現をしています。このモデリングペーストは、実は、全く別の生徒が使っていたところをこの生徒が目撃し、「自分も使ってみたい」と申し出て使うことになりました。ということは、生徒自身の中でネットワークが出来ていたり、授業のどこかで、お互いの使っている素材の情報交換をすることにより、(または中間発表など)素材感を豊かにすることができるのではないか。ということです。これは私自身、再確認することができました。

紙粘土を立体表現の素材で使っている生徒は、実際とても多く、最もポピュラーな使いかただと思います。でも、それでいいのだろうか?という疑問もあります。紙粘土以外でも立体表現をする素材はあるのに・・・、と固定化された素材感に「もう少し他の発想を持たせる方法はないかなあ」と自問しています。授業のどこかの題材で、粘土以外の材料で立体表現する方法(2年次には「ココロ13歳」で紙粘土を扱っています)を学習する題材が必要かもしれません。

ですが、もう一方、卒業制作後も、生徒たちは創造活動を続けていくということを可能性として考えるならば、今、この15時間という制作活動を充実させることで、「紙粘土を卒業する」「固定化された発想の世界を卒業させる」というコンセプトも良いのではないかと思っています。

卒業制作は、あと5時間くらい授業があります。その5時間を惰性で進ませるのではなく、卒業後の世界を考えて進めていきたい。そう考えています。