「手賀沼」制作80周年記念『川瀬巴水木版画展』 ②

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《潮来の月 昭和11年(1936)作》
乳白色のベールをかけて見るような月夜の空気はよく経験するところである。風景も構図もよく、月かげの微妙な心遣いもよい。(楢崎宗重)

《河原子エボシ岩 昭和20年(1945)作》
茨城県北部の日立市河原子海岸にあるシンボル「烏帽子岩」。中腹には海上安全の神様が祀られた「津神社」があり、海上安全や漁業大漁の神様として篤い信仰を得ている。巴水が描いた当時は、この津神社の階段の所まで海岸線があった。残念ながら現在は周りにあった岩は削られ、砂で埋め立てられている。

《水木の曇り日(茨城県) 昭和21年(1946)作》
茨城県水木は河原子と久慈浜の中間にあり、おだやかな波で、海水浴場として家族連れに人気がある。今日では「快水浴場百選」にも選定されている。近くには「常陸風土記」に登場する太古の霊泉「泉が森」があり、イトヨが生息するほど水質がよい。巴水は茨城県と福島県の太平洋岸を数多く作品に取り上げている。

《水戸涸沼の雪 昭和22年(1947)作》
茨城県の茨城町、大洗町、鉾田市にまたがる涸沼は、満潮時には海水が流れ込むため、海水と淡水が入り混じった生物層の豊かな湖。生息する魚介の種類も多く、県内屈指の釣り場ともなっている。天保4年(1833)、徳川斉昭は、領内景勝の8ヶ所を選んで「水戸八景」とした。「広浦の秋月」(茨城町)・下石崎字米津にはその八景のひとつ「広浦秋月」の碑がある。涸沼に突出した砂嘴の一つに親沢という景勝地があり、その突端は松の木が多い。巴水もこの景勝地を訪れ、雪景色に仕立てたものがこの作品。

《桃浦(茨城県) 昭和23年(1948)作》
桃浦の浦波近い民家が、長い影をうつした木かげのわずかな日だまりに、人ひとりない淋しさで描かれている。浮雲の白く流るる風情が画趣を添えた。巴水好みの図柄である。不可なき作品であろう。(楢崎宗重)

(続く)

(T.S.記)