TPP考 “自虐”に付け入る 開国=善の論理

関 曠野より

今年の日本は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に
参加の是非をめぐって充分な論議が必要だが
実は私は論議の不備を心配している
人々が日本経済の基本的事実を正しく認識しているかどうかという問題がある

国連などの統計によると日本経済の輸出依存度は高かった年でも17%
貿易が国内総生産(GDP)に占める割合は世界170国中で164番目である
つまり日本は米国やブラジルと並んで貿易の役割が
極めて小さい内需中心経済の国なのである
ところが貿易立国という錯覚がある人は自動的にTPP参加に
賛成するのではあるまいか

環太平洋といっても、TPPは事実上日本と米国の経済協定である
そしてTPPにせよ何にせよ、
この国では「このままでは日本は世界に置き去りにされ孤立する」
といった論法は人々にアピールしやすい
こうした自信のなさ、不安さも自国の現実に対する
事実誤認に関係しているのではないか

90年代のバブル崩壊以来欧米のマスコミは日本の衰退や没落を騒ぎ立ててきた
だがリーマン・ショック以後、欧米諸国の破綻に比して日本の社会が
相対的に安定していることが注目され始めた
そして最近は「日本は世界に先駆けてゼロ経済成長、人口減少の
ポスト工業化段階に入り、社会の転換にある程度成功した国ではないか」
という論調も出てきている

もちろん日本には若者の超就職難、格差の拡大、地方の疲弊など
取り組むべき問題は山積している
しかし現状を悲観するばかりの“自虐”はもう願い下げにしたい

そして「日米は共に技術大国だが米国はテクノロジーを兵器に使うのに対して
日本は美少女ロボットをせっせと作っている。だから日本は素敵だ」
というのが日本の漫画アニメファンの世界の若者の評価なのである
今日日本が外国から学ぶことはあまりない
むしろ今は常に創造的革新的だった自国の伝統を学び直すべき時である
その意味でTPP論議が日本人が静かな自信を取り戻すきっかけになることを
私は願ってやまない

<日本の原風景 里山です>