THE BIG ISSUE JAPAN 160号 PTSDに苦しむ英国の退役兵士 より

イラクにいたのは何年も前なのに今でも戦場にいるような気がすることがある

英国国防省の報告からはイラク及びアフガンに派遣された兵士のうち
2000人以上がPTSDを発症していると考えられるが
元兵士ケヴィン・アイヴィソンは実際の患者数ははるかに多いはずだと話す

「軍隊は敵を攻撃して戦いに勝つのが任務ですが
爆弾処理班は自衛のための組織です。僕自身は戦闘的な人間ではありません
爆弾処理係は戦場のあらゆる興奮と緊張感を味わう一方で
人命を救う仕事なので自分向きだと思ったんです」

05年イギリス軍が駐留するイラクに派遣された
そこで直面したのは敵意むき出しの地元民、反政府勢力からの
度重なる襲撃、絶え間なく空を飛び交うロケット弾の恐怖だった
3ヶ月に77回攻撃されロケット弾の爆撃音、死の恐怖、無力感から
何人もの兵士が精神に変調をきたした

任務終了まで後数週間というところで最大の試練が訪れた。
爆弾が爆発して親しかった兵士が2人犠牲となったのだ
2つ目の爆弾が見つかりアイヴィソンは一人で現場に向かい爆弾の処理を終えた
この事件は彼の精神に大きな傷を残した

アイヴィソンは怒りの爆発、孤独感、悪夢、気分の落ち込みにさいなまれ
さらには爆死したリッチー・ホームズ大尉の幻覚を見るようになった
何ヶ月も苦しんだ末軍医の診断を受けたが「様子を見よう」と言われ9ヶ月が過ぎた
08年に除隊して6ヶ月にわたる認知療法を受け回復に向かいつつある
「治療の効果は絶大です。治療開始から間もなくして生まれ変わったように感じた」

一方でPTSDを放置すれば社会は将来にわたって深刻なしわよせを受けると警告する
予備役を含めこれまでより多くの部隊が戦地に派遣されている以上
軍はPTSDが大量発生するのを防ぐ義務があるだろう

「私自身は自分の意見をはっきりと述べる方だが
軍から適切な治療を受けさせてもらえなかった
自分の希望を伝えようという意志も能力もない若い兵士なら治療を受けるのは難しい
私は治療を受けるのに4年かかったが平均は14年かかるといわれている」

今では軍部も治療の必要性を認識しつつあるようだ
精神的な問題を抱える退役軍人を支援するNGO「Combats Stress」は
専門的な治療を必要とするケースが72%増加したと発表した

・・・・・PTSDはベトナム戦争のときに米軍兵士から発見されたそうですが
人類はちっとも進歩していませんね・・・・・・

<エリカも冬の花です>