この報告書は、飯舘村後方支援チーム代表糸長浩司(日本大学生物資源科学部教授)が2011 年4 月4 日、報道関係者ならびに関係機関各位にあてたものです。
<前文>
たいへんお世話になっております。
このたびの東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質放出により福島県相馬郡飯舘村は大半が避難勧告・屋内退避勧告の範囲外であるにもかかわらず、県内他地域に比べて空中線量率が高く、土壌が高濃度の放射性物質によって汚染されていることが推察されました。実態を把握するため、3 月28 日、29 日の両日、京都大学原子炉実験所今中哲二助教を代表とする「飯舘村周辺放射能汚染調査チーム」が現地入りし、村の協力を得て、汚染度の詳細かつ広汎な調査を実施いたしました。本日、その暫定的な報告書がまとまり、同調査チームから発表されたことをお知らせいたします。
<調査報告書のURL>
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No110/iitatereport11-4-4.pdf
調査の結果、飯舘村の南部を中心に30km の圏外であっても高い放射能汚染地域が存在すること、一部地域では、15 日以来の累積で国の指標によって「避難すること」とされる被曝量に達しつつあること、土壌への高濃度放射性セシウム沈着が見られること、などが明らかになりました。
この汚染は、15 日朝、第一原発2 号炉の格納容器破壊に伴い放出された放射能雲が飯舘村付近に達し、折からの雨や雪で降下、沈着したものと思われます。
この報告書を受け、後方支援チームとしては、村に対して以下の提案を行いました。
1)道路・建物敷地での徹底的な除洗を、国または県に要請する
2)南部の曲田等の土壌の放射性物質の蓄積による放射能線の高濃度地区住民は、村外、
か村内の比較的濃度の低い地区等に当面避難する
3)子ども・妊婦は、村外への避難が望ましいが、最低でもコンクリート建物内に避難し
て頂く
4)外での農作業等は極力控える
もとより、今回の放射能汚染に関して、村には何ら責任はありません。しかし、村は屋内避難勧告地域に一部がかかるだけで、大半が圏外であるため、国や県からの明確な勧告や支援を得られていません。こうした状況に鑑み、後方支援チームとして国や県に対して、以下を要望いたします。
1)30km 圏の線引きにこだわらず、汚染状況に応じたきめ細かい対応・対策と支援
2)既に文科省等が実施してきた土壌調査の結果の速やかな公開
3)今後中長期にわたる詳細なサーベイの実施とその結果の公開
4)すみやかな汚染除去対策の実施
5)村民に対する健康管理の実施
6)避難や今後の対策にかかわる費用の補償
今後とも飯舘村への皆様の温かい支援・協力をお願いいたします。
●飯舘村後方支援チームについて:日本大学生物資源科学部糸長研究室では、飯舘村と共同で持続可能な村づくりを目指すさまざまな取り組みを15 年にわたり行ってきたことから、今回の東電原発事故災害に伴う、情報収集・広報・助言などを行っている。今回の「汚染調査チーム」にもメンバーが参加している。
<本リリースに関するお問い合わせ先>
小澤祥司(おざわしょうじ)日本大学生物資源科学部非常勤講師