震災から1カ月。

歌うこと。音楽を奏でること。
これは何かの役に立つのだろうか・・・。誰かのためになるのだろうか・・・。

そんなことを、迷路に入ってぐるぐると同じところを回っている迷子のような、泣きだしたいような気持ちで考えていました。

大勢の人々が、家や財産や、大切な人を奪われ、すべてを剥ぎ取られたかのような出来事の前で打ちひしがれている時、歌や音楽は、何の役に立つのだろうか。自分が打ち込んできたものの非力さばかりを感じ、歌を口ずさむことからも離れていました。

日常に歌があり、何かをしている時、いつも無意識にハミングしたり聴いたりしながら生活していた自分が、どこか遠くに行ってしまったような、深い喪失感に悶々としている毎日でした。

それでも、一か月が過ぎて、時の癒し・・・とでもいうのでしょうか、固く閉ざされた心が、「時」の静かな慰めによって、少しずつほころび、新たな光を求めて開いてきたように感じます。

もっと前向きに音楽の力を見出そうという、意志の力が心に芽生えてきました。

そんな時、NHKのニュースで紹介された指揮者ズ—ビン・メータ氏の言葉に心が立ち止まりました。

彼は、言いました。

「音楽には力がある。それは人と人を結ぶ強大な力だ。」

短いインタビューの模様を見て、これまでの私が、音楽というものをどちらかというと1対1の関係でしか捉えていなかったことに気づきました。

音楽というものを「癒し」という面でしか捉えていなかった私に、彼は「人と人を結ぶ力」という広がりのある観方を示してくれました。

同じものを見ていても、そこにどんな意味を見出したり付与したりするかによって、物事の見え方が変わり、それによって自分が変わって行くことを、この1分間の報道が教えてくれました。見方は味方。本当にその通りです。

「人と人をつなぐ」音楽。そういう力をそもそも持っている音楽を、これまでの私は自分の限られた経験や狭い視野によって限定してきたことに気づきました。それに気づいた今、これからは音楽のもつ可能性や魅力を、さらに深く広く、そして高く、探って行きたい。そう考えています。

今日は、夏ぐらいにはコンサートを!という依頼をくださった、稲城市の福祉施設の方と打ち合わせをすることになりました。

どんな出会いが待っているか、楽しみです。

「人と人を結ぶ強大な力」をもつ音楽。音楽に対してこれからは謙虚に頑張ります!!

どうぞ良い一日をお過ごしください。
今日も読んでくださってありがとうございました。
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