数年前のことになりますか、スパゲティを使うグラタンのCMでのキャッチコピーが秀逸でした。
いわく、「寒くなるとおなかがすくの」。
思わず納得した覚えがあります。
そんなわけでなんだか寒い今日この頃、今回は、「おいしい本」のブックトークでも。
そも、おいしい小説となると、まずは登場する(この場合出てくる、より、登場のほうが合っているように思えまして)料理が「おいしそう!」ということに尽きますね。
小川糸さんの『食堂かたつむり』は、ある種その代表格のようなものではないでしょうか。
なにしろ、舞台は食堂。
おいしいものが出てこないはずがない。
そしてそのおいしいものが解きほぐしていくものは……。
同じく、こちらはちょっと洋風に。
近藤史恵さんのビストロ・パ・マルを舞台にした連作小説『タルト・タタンの夢』『ヴァン・ショーをあなたに』はお料理がミステリー仕立て。
お料理を楽しみながら、「え? どうして?」が解決に向かうのは楽しいですよ。
そしてタイトルからは想像もつきませんが、池波正太郎さんの小説にもお料理が数多く登場。
御馳走のしゃも鍋はもちろんですが、なぜ普通の根太汁(=ねぎの味噌汁)があんなにもおいしそうなのかと。
このあたり、実はファンの人たちには周知の事実であるらしく、料理の描写だけを抜き出した本もあります。
また宇江佐真理さんの本にも一冊、食道楽のお舅さんの登場する小説が。
食べること、食べさせること、そして食べ物そのもののこと、それで不思議にもつれた糸がほぐれていく……。
江戸時代の料理は素材の良さもあり、人気のようです。
そうそう、おいしそうといえば、児童文学を忘れてはなりません。
これはいったいどういうもの?と想像の中で味を楽しんだ人も多いのでは?
(メアリー・ポピンズの、てっぺんに星の金紙を張り付けたジンジャーブレッド! あれを私、もう食べたくて食べたくて)
それを再現しちゃう、というレシピ本もあります。
食べたかった人、多かったんでしょうね。
レシピ本、実は大人向けの棚に置いてあります。
タイトルからして、何かおいしそう……
と、ケーキやおかしに手を伸ばす感覚で本を手に取ってもらえたら、なんて、おいしいもの好きな司書は思っています。
参考図書
『食堂かたつむり』小川糸
『タルト・タタンの夢』『ヴァン・ショーをあなたに』近藤史恵
池波正太郎各種著書
『卵のふわふわ』宇江佐真理
『風にのってきたメアリー・ポピンズ』ほか、メアリー・ポピンズシリーズ P・L・トラバース
『絵本からうまれたおいしいレシピ』シリーズ きむらかよ
『絵本のなかのおいしいスープ』『絵本の中の幸せスープレシピ』東條真千子
『イギリスのお話は、おいしい。すてきなティータイム』『イギリスのお話は、おいしい。料理編』
他、参考にいたしました。
(文責:氷魚)