ヘレナさんから、ポスト311へのメッセージ

昨日、5月22日は、「国際生物多様性デー」。そして、ナマクラのスロービジネスのひとつ、カフェスローの10歳のお誕生日、でした。

全国では、いのちの多様性を祝う日にふさわしく、ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ監督の映画「幸せの経済学」の全国自主上映が、なんと113ヶ所で開催。金太郎飴のようなグローバル化による均一化ではなく、独自性、地域性にあふれたローカル化のうねりが、この映画とともに、力強く、うごめきつつあることを実感した1日でした。私たちナマケモノ倶楽部も、カフェスローで自主上映会(午後)。100名を超える方と一緒に、あたらしい世界へ、つながりを取り戻しながら、どう降りていったらいいのか、を考える深い時間でした。

■ヘレナさんから、311以降、メッセージをいただいてました。辻信一さんの訳でおすそわけです。

私の心は、困難な時を過ごしているすべての日本の友人たちや仲間たちとともにあります。まず私が言いたいのは、深刻な危機の中にあっても落ち着きと威厳を保ち続けた日本の皆さんが世界に与えた感動のことです。世界の他の場所なら、略奪や騒乱や混乱状態が起こってもおかしくないような惨禍の中にあってなお、穏かさと互いへの思いやりを失わなかった日本の皆さんの様子に、世界中が驚きました。現代に生きる私たちみんなにとっての素晴らしい模範を、あなた方は示してくれたのです。

私は心から願っています。この危機をきっかけに、あなた方の国における発展と進歩の方向性が根本的に見直されることを。ますます多くのエネルギー消費を必要とする経済システムの愚かさと残酷さに、人々が気づくことを。日本ばかりではありません。世界中の人々が、消費を煽り続けて経済成長を追求する社会・経済システムの罠にかかって、目を眩まされてきたのです。経済成長なるものは、生物の世界における成長とは相容れないものです。それどころか、経済成長とは、無限の多様性を原理とする生命の世界に、それと正反対の“モノカルチャー(均質性)”という死の原理を持ち込むことによって、自然がよって立つ基盤そのものを突き崩そうとするのです。

このように時代遅れで腐敗した経済成長という考え方が、もうこれ以上人々を押し流さないよう、私は願っています。自分の心の声が、そして自分の中にあるはずの健全な常識や知恵がきっと頼りになります。あなた方の国で起こった大災害は、これまでむやみに経済成長のみを信奉してきた人々の心をも揺さぶったはずです。同時に、経済の原理ではなく、いのちの原理の側に立つ人々の思いを確信に変え、相互の絆を強めることになったことと、私は期待しています。

この危機の中でこそ、私たちは手をさしのべ合い、コミュニティのつながりを編み直さなければなりません。そして、生きている大地へと向き直り、動植物をはじめとする自然界との一体性を取り戻すのです。

2011年4月 ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ