中国映画『山の郵便配達』

昨晩、自宅で夕食を食べてますと、

たまたま両親が、なんとなーく観ていたのが、

『山の郵便配達』(1999年・中国映画)。

大学生の頃、芸大に行きながら

中国語をがんばって勉強していた頃、『初恋の来た道』

(チャン・イーモウ監督、チャン・ツィイー主演)は

映画館で観たけど、確かこれは

観たいと思ってて、結局観ていなかった映画だったと思い出し、

そさくさとゴハンを食べて、我が部屋に篭って

じーっと観ていました。

物語は、中国の山間部の、車も通れない僻地の村々に

郵便配達をしていた父親が、長年の無理がたたって

足がわるくなってしまい、24歳の息子に

自分の職業をゆずる為に、

一度だけ2人で、2泊3日・一日40キロの、配達の道のりを

大きなリックサック(僻地の住民宛の手紙が入っている)を背負って歩きながら、

父親が息子に、郵便配達の仕事(=志事)を

教えていくというもの。

父親は、この職業を長年していた為に、

家を留守にすることが多く、しかも寡黙な父だった為、

息子は父を嫌い、敬遠していたけど、

二人で一緒に<旅>をすることによって、

息子は、父親が、いろんな人たちに尊敬され、信頼され、

そしてその人たちにとって「なくてはならない人」なんだということが分かり、

だんだんと、息子と父親は心が打ち解けていき、

父親の職業を、心の底から継承しようと固く決意します。

(はじめは、「郵便配達員=公務員やから収入が安定している」と

安易な気持ちで引き受けた)

老いて足が悪くなった父を、

川を渡るために息子おぶってあげて、ゆっくり歩く姿で、まず号泣。。。

息子:「父って、こんなに小さかったっけ?いつのまに、

こんなに小さく、軽くなんたんやろ・・・?」

父:「(幼少の頃、息子を肩車してた映像を思い出し)いつのまに、

こんなに大きく、たくましくなったんやろ・・・?」

二人の、最初で最後の2泊3日の旅が終る直前、

5年前、10年前、15年前くらい・・・と、

配達を終えた父親が、妻と息子が出迎える自宅に帰る瞬間を

走馬灯のように思い出すシーンは

最高MAXで号泣。。。

・・・男同士だからでしょうか?

とにかく、映画全体に、会話というものが少ない。

登場する素朴な田舎の人たちの顔の表情や

美しい中国の山間部の風景、素朴な音楽など・・・

とにかく、出来る限りムダなもの(細かい言葉や過度な演出)をそぎ落として

淡々と展開されるのが、いい。

そしてどこか「なつかしい」と思える、親近感の持てる不思議な映画です。

派手&大胆なアメリカ映画、繊細&緻密な日本映画もいいけれど、

こんな素朴で地味な中国映画も、素晴らしい。

大げさにも背伸びも、美しく見せようとしない・・・

「ありのまま」を切り取り、映像化したって感じの映画。

実は、よしこちゃん。こんな映画が一番好きだったりします(^^)。

(最近とんと、この手の映画って見かけなくなりましたが・涙)

どうも人間って、「欲」があるので、

「これでもか〜」って感じで、

どんどん足して、プラスにしたくなります。

それは、それでいいのですが、、、

だけど、この映画って、

どんどん除去して、マイナスにして、

本当に必要なものしかないように思えます。

きっと今の中国人も、日本人も・・・世界全体が

こんな映画(価値観)を密かにですが

今も、求め続けているのかも知れませんね。

また、この映画は、親子(人と人と)の絆がテーマのようです。

目の見えない祖母宛に、孫がたまに、

白紙にお金を包んで送って来たのですが、

何も書かれていないのに、配達員の父は、

「おばあさん、お元気ですか・・・?云々」と

おばあさんのために「やさしいウソ」をつきます。

今の中国人って、めっちゃ自己チューで

他人や他国の人たちに冷たいイメージがありますが、

この映画を観ていますと、それは、ごくごく一部の中国人像を

切り取った映像に過ぎないなーって、改めて反省させられます。

ほんと、人間ほど、残虐で罪深い生き物はこの地球上ではおりません。

が、人間ほど、美しくて素晴らしい生き物はいないと思える・・・

そんな清らかな映画でした(%笑う女%)(%ハート%)