関東大震災で最大の被害を出した被服廠跡、本所の荒井湯

9月1日は関東大震災が起きた日で、防災の日になっています。これまで同潤会住宅はじめ震災復興事業を数多く紹介してきましたが、そのシンボル、東京都慰霊堂や復興記念館がある横網町公園に行ってきました。
 両国駅から北へ、国技館の前から両国公会堂のある安田庭園を抜けると横網町公園です。国技館はありますが「よこあみ」です。念のため住居表示などもふり仮名が振ってあります。
 横網町公園は関東大震災当時は本所被服廠跡の空き地でした。被服廠とは陸軍の被服工場です。本所は震災の被害がひどく、多くの人がここへ逃げ込んだそうです。しかし強風にあおられた炎が、持ち込んだ家財道具などに燃え移って、大勢の人が焼死してしまいまったという悲しい現場です。
 いま訪ねてみると意外に狭く(2ヘクタール弱)、4万人もの人が亡くなったのが信じられないほどです。それでも家財道具などの可燃物がなく、予定されていた公園になって樹木が植わっていれば助かったかもしれません。

本所は忠臣蔵の吉良上野の屋敷があったなどの歴史があり、範囲も広かったのではと想像しますが、今は両国駅と本所吾妻橋駅の間のあまり広くない範囲です。住所が本所の銭湯は2軒あり、その一軒、荒井湯は春日通から引っ込んだところに建つ立派な和風建築で、破風の漆喰の部分にもきれいな模様があります。高い格天井の脱衣場は広い庭に面しています。浴室はタイルが新しくなって清潔な感じですが、高い湯気抜きのある伝統的な構造です。
 一番目立つのは浴槽背景のペンキ絵です。男湯はスカイツリーのある墨田区の現在の街並み、女湯は富士山のようで、空と雲がつながっています。中島師のサインがあり、お店がスカイツリーの絵をリクエストされたのでしょうか。男女の境の壁にも赤富士や建設中のスカイツリーの写真などが貼られています。
 このあたりは関東大震災の被害がひどかったからでしょうか、モルタル造で防火を強化した建物が目立ちます。震災復興の区画整理事業で道幅も広く、戦災をくぐり抜けて残っている建物もかなりあるようです。

荒井湯 墨田区本所2−8−7 15:30〜24:00 6のつく日お休み(日曜、祝日、金曜は翌日休) 都営浅草線本所吾妻橋駅から10分、JR、都営両国駅から15分