秋を旅する − 長野県小布施・松代を行く

長野県の小布施町は、30年以上前に私の友人が小布施の果物農家の方と結婚式を挙げるので初めて訪れた地である。当時は、栗の木会館という式場があるくらいで静かな町だった。しかし、ここ15年くらい前からか、<訪れたい観光地>として何度も取り上げられすっかり有名になった。新緑や紅葉を愛でるのもよし、美術を楽しむもよし、銘菓を食するもよし、そして<オープンガーデン>と称して、店や自宅の庭を開放するという訪れる人の心を和ませる“おもてなし”もある。そのため、ここ数年は、春と秋の年2回行くのだが、平日に行っても町は地図を片手に歩く人や車で溢れ、思うように動けない程である。この秋も人気の喫茶店は順番待ちをしていた。新しい店も続々と増え、「峠の釜飯」の荻野屋や伊那市の「かんてんパパ」の伊那食品などまで小布施に店舗を構えた。ますます賑わう小布施である。
私は途中で温泉地に1泊し、いろいろな湯を楽しみつつ、様々な町を旅する喜びも味わっている。渋温泉・奥山田温泉・万座温泉・野沢温泉などなど‥。
なるべく行ったことのない温泉をと、今回は<松代町>を初めて訪れることにした。日本の歴史にも弱い私は、松代というと「昭和40年代に地震があった町」ということしか頭に浮かばない。松代の国民宿舎から送られてきた簡単な案内図を見て、松代城跡や童謡歌碑などに行ってみたいと思った。たまたま立ち寄った喫茶店に『遊学城下町「信州松代」まち歩きガイドブック』という雑誌に目を惹かれた。この本は<NPO法人 夢空間松代のまちと心を育てる会>の発行。表紙も内容も思わず見たくなる・読みたくなる!「まち歩きセンター」に行くと買えると言われ、行ってみると茶菓の接待もしてくれた。
(写真1:『遊学城下町「信州松代」まち歩きガイドブック』)

この本に沿って松代城址や童謡歌碑を見て歩き、街中を清らかに流れる小さな川に心を癒された。
(写真2:城下町松代の街並み)

ある童謡歌碑は町の小学校の中に建てられていたのだがどこから入ったらいいか分からずに松代藩校のボランティアの方に聞くとその場所まで案内してくれ、その後も「休憩所があるから休んでいってください」とこれまた案内してくれた。そこには、ボランティアの方が3人いらして、ここでもお茶と手作りの梅干でもてなしてくれた。「我孫子から」と聞くと「いい町ですよね。自然があって、しかも都会に近い」と嬉しい評価をしてもらえた。
(写真3:童謡歌碑を巡る)
私は、団体旅行でなく個人的な旅でボランティアに会ったのは初めてであり新鮮な出会いであった。また登録文化財を推進する活動を平成16年から続けているこのMPO法人の素晴らしさを感じ、この方々にも会いたいと思った。ガイドブックによると登録文化財や古樹が多くある町である。いつかまた訪れようと夫と話し、帰路についた。

(会員 K.A)