不思議な大橋眼科の建物、貴重な戦前の銭湯建築、千住寿町の大黒湯

北千住駅から西へ延びる商店街、アーケードが一瞬途絶えたところに、古い洋館風の建物があります。周囲はにぎやかな商店街なので、そっちに気をとられていると見落としそうです。道の北側、国道4号の交差点より手前の、バス停の向かいあたりです。
大橋眼科というお医者さんの建物で、昭和57年の建築、ですがそんな新しい建物には見えません。というのも、以前の医院の建物のデザインを受け継いで、しかも集めた古い資材で再現したものだそうです。デザインを再現したものとしては、東京物理学校などがありますが、資材も古いものでというのは英国などでは当たり前のようですが、日本では珍しく、大変苦労されたのではないかと思います。
美章園温泉から保存した材料で将来は銭湯開業をめざすという夢はいかがでしょうか。

大橋眼科から少し北へ行くと、もう一本商店街があります。この通りを西へ、国道と交差する千住寿町の交差点を越えたところに大黒湯があります。
同じ千住のタカラ湯と同じ、木を格子に組んだ大きな破風で、見事な彫刻があります。ここの最大の見ものは脱衣場の格天井です。一段折り上げ、さらに曲面で折り上げた凝った構造だけではありません。格子の区画一つ一つにすべて花の絵が描かれて、お寺やお城の天井のようです。また鳥の絵が額で飾られています。年月を経てかなりくすんでいますが、新築の時はさぞ華やかだったと想像されます。
浴槽の背景は中島師の富士山に渓流、女湯との境は「宗榮」と署名のある中山道野尻宿のタイル画です。銭湯のタイル画は「章仙」さんの魚や風景を主に線で描いたものが多いようですが、ここのは、写実的に全面彩色です。伝統の造りで、湯気抜きの幅があって、広々とした銭湯です。
大黒湯 足立区千住寿町32-6 15:00〜24:00  月曜お休み(祝日の場合翌日休) 北千住駅から10分