平成23年度津市総合防災訓練参加報告と検証…「失敗するための防災訓練」

昨年11月27日に、津市主催の津市総合防災訓練が開催され、津市ボランティア協議会もこれに参加し「シナリオの無い即応型訓練、別名 失敗するための防災訓練」を実施しました。このほど、報告と検証がまとまりましたのでご報告します。

●津市ボランティア協議会関係の参加者数
津市ボランティア協議会(以下津市ボラ協)の参加者は、会場の一角の道路に集合。(被災直後は集合場所をきちんと連絡できないことを想定し、津市ボラ協の黄色いのぼりを目印に集合した)その後、ボランティア本部のテントに移動した。
総数46名(うち障害を持った方8名、幼児2名、津市社会福祉協議会と連携した『災害ボランティア対応受付訓練』に参加した方4名)。
・障害の内訳、車いす利用者4名、(電動車いす使用者1名、電動アシスト車いす使用者2名、手押し車いす使用者1名) 聴覚障害者4名。
・幼児は参加者の家族で、3歳児と、1歳児。

●訓練日と会場について
開催日:23年11月27日 9:00開始。12:00終了。天候は晴天。
会場は、津市高茶屋の三重中央自動車学校を中心に、その隣の空き地が中央会場になりそこで消防、警察、自衛隊、自主防災組織、消防団等による展示訓練が実施された。
津市ボラ連が呼びかけた災害時要援護者役の方(と言っても冒頭に記載したように実際に様々な障害を持った方)は中央会場の展示訓練の見学テントで待機しもらった。
中央会場の空き地の隣に、高茶屋市民センターがあり、そこの駐車場に、災害ボランティアセンターのテントと、航空自衛隊の炊き出しテント等が設置された。つまり、我々の支援拠点は、中心から300メートルほど離れていて、中心会場はよく見えない。

●津波避難訓練
今回は、津波避難訓練として、防災訓練スタート直後、地震発生と共に津波発生が想定され、会場に隣接する3階建てのビルに避難するという訓練が実施された。
計画の段階で、津市に『障害者も参加してはどうか』と提案したが、時間がない(障害者が参加すると時間がかかり進行が厳しい)と、危険が生じる(特に外階段は危険)等の理由で受け入れられなかった。津波対応の意識向上には意味があるだろうが、それでは『元気な人の階段昇降運動』でしかないのではとの印象を持った。

●発生した問題とその対応(運営全体に関して)
①見学者テント(勝手に避難所に見立て要援護者の方に待機してもらった)が『災害ボランティア本部』から遠かった。災害時には、条件が悪いのを克服しながら活動すべきであるが、今回の防災訓練では、9時から12時までと時間が限られたので効率が悪かった。
※しかし、本部から見通せるのも訓練としては良くない。というのは、避難所の状況等の報告は、避難所に赴いたボランティアが状況を言葉で伝え、それを本部で共有することができるかも訓練の重要な項目であるから。

②見学者が少ない。要援護者を捜し出すのだが、見学者テントにほとんど人が居ないので、すぐに見つかってしまった。
また、災害時には多様な要援護者が存在しその対応を実演し、それを啓発につなげることも必要だと思うが、見学者が居ないので実現できなかった。

③従来実施されていた、アレルギーの人への配慮が忘れ去られていた。今回は、最後にパンの配布等が実施されなかった事もあるが、今回訓練のどこにもアレルギーについて意識された表示等は無かった。(航空自衛隊の炊き出しでのアレルギー配慮等は未確認)

●津市ボランティア協議会の訓練内容とその対応について
今回は、障害をもった人も参加し、シナリオ無しで生じた問題点を解決するというスタイルの訓練に初めて参加する地区の方がいたので、要援護者と支援するべきニーズ(生じる問題)を少なくした。
今回、幼児が参加(両親に付いてきた)ことから、要援護者の範囲に幼児も含めるかについて、またそのニーズに応えるかについて皆で検討・論議し、あの混乱?のなかで的確な決定ができたことは、この『失敗するための防災訓練』の大きな成果であると思う。クロスロードを防災訓練で実践しているようであった。
単に、要援護者の支援活動を実施するのではなく、(発災直後、行政の支援が立ち上がっていない段階で、ボランティアが集まり要援護者への支援を開始したとの設定)、どのように支援すべきか、以下に上げたいくつかの問題を、集まったボランティア全体で検討し、共有できたことは大きな成果であったと思う。

①子どもが空腹を訴えた。さて、どう対応するか?
車いす使用者にニーズを聴きに行った際、その方のお子さんが空腹を訴えた。→避難所には他のお子さんもいるので、その子どもだけに対応しては不公平を生じさせるのでは。また、ボラ本部のテントの隣では、航空自衛隊による炊き出しの準備がされていたが、いつ炊き出しの配布が開始されるのか案内されていないのに、その家族だけに伝えるのは不公平であるので、ボラからは伝えず「行政から案内があると思うのでそれを待ってください」と、ボランティアが伝えた。

②車いす使用者(脊椎損傷の手動の車いす)の男性が寒いと訴えた。
→ボランティア本部に戻りボランティアに声を掛けて探したら、参加ボランティアのひとりがジャンバーを持っていたので、それを貸した。
※この車いす使用者の方は、脊椎損傷の障害があった。脊椎損傷の場合、体温調節がうまく出来ない場合があり、気温が低い場合、低体温症になる場合も多い。同じ車いす利用者であっても、障害の特徴を理解する必要があることが必要。また、要支援者自身も、リスクや障害の特徴をキチンと支援者に伝える必要があると感じた。

③聴覚障害者の方への支援。
避難所の方に向けて、ホワイトボードに「聞こえに不自由な方の支援をします」と書いて見せて回ったことで、支援ボランティアの存在が伝わった。
※聴覚障害者の方からの意見
ホワイトボードの文字が薄く、細かったので文字が読みにくかった。
他に、蛍光色のペンを使用してはどうか等も意見もあったが、『文字の読みやすさは、バックの紙との明度差による』。つまり、目立たせる場合の蛍光色と、可読性を高めるために必要な条件が混同されていたようなので、専門的な立場から説明をした。
※支援ボランティアから、障害者を判別できる目印が必要との意見
聴覚障害者は外見からは判別する事は難しいので、「耳マーク」等、聴覚障害者である事を示す目印をつける必要がある。
※訓練後附記…最近内部障害を持った方が『見えない障害バッジ』を製作した。
ネットでは『見えない障害バッジ』で検索。http://watashinofukushi.com/?page_id=44

④電動車いす使用者がトイレに行きたいと訴えたのでトイレを探した。
しかし電動車いすのバッテリーが上がって自力では移動出来ない(という設定)→女性4人が押して、訓練会場周辺のコンビニ等を探しトイレに到着。大変であったとの事。
○電動車いすの重量は約90キロ。使用者の体重を加えると130〜140キロ程になる。女性4人が長距離押し続けるのは無理。
○釣り上げて移動する場合。
たまたま、通りかかった自主防災会の男性5人に依頼して、長さ3メートル程の橋を越える為に、釣り上げて移動してもらった。男性5人でも3メートルが限界であった。電動車いすの持つ所が少ないので余り多くの人数では持てないという問題もあった。
○電動車いすは持ち上げようとすると、あちこち外れるので注意が必要。
そもそも、電動車いすは持ち上げて運ぶようには作られていない。
○非常時に備えて、持てる所に印し(持つと外れるところに注意書きか)があるといい。
○電動車いすは曲がらない。後輪の左右の駆動力を変える事で曲がるので、押しながら方向を変えるのは大変力が必要。また地面によっては、転倒の危険あり。シートベルトが必要では。
※同様に、手こぎ(手押し)の車いすも運ぼうとすると、あちこち外れるところが多い。

●案内用のチラシ(重いバージョン・軽いpdfはのは下をクリック)
http://www.doh-net.jp/111127tirasi.pdf

報告者:副会長 萩野茂樹