名取の両親と久しぶりに故郷で過ごしてみて、震災の傷が癒えるにはまだまだ時間がかかることを実感しています。
もちろん復興に向けて具体的な動きは生活の中にも、行政の中にも、すこしずつ表れてきているようですが、人々の心の中には、大きな傷が残っていて、寂しさや哀しさを感じます。
だからといってふさぎこんでばかりもいられない。
そんな想いがだれの胸にもあって、つとめて元気に生活しようという想いは、年老いた両親の中にもあるようでした。
ひさしくつかわなくなっていたカラオケセットを取り出して、一緒に色んな歌を歌ってみました。
すると、母が「これ歌ってみて」「これは?」といろいろリクエストしてくれます。
女学校時代に歌った、数少ない思い出の歌の中から、リストが実はできていて、誰かに歌ってもらうのを待っていたとのこと。
ローレライ、埴生の宿、故郷、庭の千草、野薔薇、
などなど。
それをひとつひとつ歌ってあげました。
父も一緒に聴いたり、お得意の歌を久しぶりに歌ったりして、震災から1年目の夜は3人でのミニコンサートとなりました。
歌を歌うことでずいぶん顔色も良くなり、笑顔が戻り、心和むひとときが過ごせたようです。
歌の力を信じます。少しでも日々が明るく、和やかな気持ちで過ごせるように、これからも時々帰省して一緒に歌おう、そう思いました。
故郷の友たちのそばには帰ったものの、今回はとうとう誰とも連絡を取らず、電話さえできませんでした。
何をどう言葉にしたらいいもわからず、
メールもせず、ただそっとお祈りしただけになりました。
みんな、元気でいてね。
いつも想っています。
こんなことしかできないけれど、それが今の私にできること。
心の中で共に歩むこと。
またもう少し暖かくなったら、会えたらいいなあと思っています。
心からの祈りをこめて。
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