自閉症の三つの症状
発達障害の第2のグループについては
自閉症及び広汎性発達障害の一般的なグループと
知的に遅れのない高機能広汎性発達障害グループとに
分けて本章と次章で取り上げる
その理由は自閉症グループは『発達障害のチャンピオン』であり
極論を言えばこのグループに対して十分に対応できれば
他の発達障害への対応は容易であるからである
ここで『高機能』という用語について解説を加えておきたい
高機能と知的な遅れがないことを意味し、一般にIQ70以上のものをさす
IQ70以上の自閉症を高機能自閉症、
IQ70以上の広汎性発達障害を高機能広汎性発達障害と呼んでいる
それに対しIQ70未満の知的障害を伴うものに対しては
「低機能』では不適切なので非高機能広汎性発達障害と呼ぶようにしている
広汎性発達障害の中心は自閉症である
自閉症はそれ自体が科学史に特筆すべき迷走の歴史を持っている
なぜなら1943年のレオ・カナーによる最初の報告以来
一貫して質、量ともに膨大な研究がなされてきたにもかかわらず
その基本的な病因仮説がはしなくも二転、三転したのである
この本でその詳細を辿ることは避けたいと思う
興味のある方は拙著『発達障害の豊かな世界』(日本評論社)をごらんいただきたい
何より自閉症はそれだけ謎に満ちていたということであろう
自閉症とは生来の社会性のハンディキャップを持つ発達障害である
今日、自閉症は次の三つの症状によって診断される
第一は社会性の障害である。第二はコミュニケーションの障害である
第三は想像力の障害とそれに基づく行動の障害で
一般的にはこだわり行動と呼ばれている
この三つが国際的診断基準の示す基本症状で、言い出した人間の名前をとって
『ウィングの三症状』と呼ばれることもある
それ以外の重要な問題として知覚過敏性の問題がある
又多動な子どもがいたり、学習障害を呈する子どもがいたり、
不器用な子どもがいたりする
このような広い発達の領域に一度に障害を生じるので
広汎性発達障害と呼称されているのである
ここで注意を要するのは知的ハンディキャップに関して、この三つの症状は
何も語っていないということだ
自閉症と診断される子どもには再重度の知的障害を持つものから
まったく正常知能のものまでいる
この三つの基本症状のおのおのについて説明を行うが
それぞれ「自閉症の」社会性の障害
「自閉症の」コミュニケーションの障害という具合に
自閉症独自の形を持つのである
<ムスカリは小さな花です>