発達障害の子どもたち 杉山登志郎より その8

愛着とその障害

愛着行動とはもともと乳幼児が不安や恐怖に陥ったときに
養育者との交流によってその不安をなだめる行動である
一般に愛着は子どもとその母親との間において研究されてきた
父親との間にももちろん愛着は形成されるが
母親ほどきちんとした絆になりにくいことはどうやら事実である

余談であるが実地の観察による研究を見ると
乳児との相互作用はどの形態の社会で調査を行っても
圧倒的に母親との関わりが8割以上を占めており
15%程度が兄弟相互の関係であり、それ以外が父親となる

さて、愛着行動としては次の3つがある
これらの行動はすべて乳幼児が不安になったときに特に顕著に
表れる行動であることに注目して欲しい
愛着者にじっと視線を注ぐ「定位行動」
愛着者にしきりに泣き声を上げたり声をかけたりする「信号行動」
愛着者に後追いをしたりしがみつこうとする「接近行動」の3つである

愛着行動はゼロ歳代後半から始まり、2〜3歳に第1反抗期をもって
完成することが知られている。この時期になると目の前に愛着者がいなくとも
愛着者のイメージを想起するだけでそれほど不安に駆られることはなくなり
つまりしばらくの間であれば養育者から離れることができるようになってくる
この愛着行動は安定した対人関係の基礎ともいうべきものである

さてこの愛着の形成に支障が生じた状況が反応性愛着障害である
子ども虐待においては安心を与えてくれるはずの養育者から
被害を受けるのであるから、重大な情緒の混乱をきすことはご理解いただけるだろう

この障害が対人関係の重大な問題にいたることは当然として
重要なことは衝動や怒りのコントロールの障害をきすことである
愛着が子どもの不安に駆られたときに見られる行動であることを思い起こして欲しい
愛着形成に決定的な問題が生じると、子どもは不安なときに自分を慰め
安心させる術を持たないままに成長するのである

<セイヨウサンザシが咲きました>